日記
本文約7,500字 ・ 読了時間 約15分
あらすじ(AIが作成しました)
戦争下の窮乏した生活や戦時体制の混乱、日々の出来事を綴る随筆。筆者は『史籍集覧』の手入れや古書の収集に喜びを見出しつつ、物価の高騰や切符制度による制約、防空演習など、逼迫する現実を冷静に記録する。また、近隣の人々との交わりや家族との日常を通じて、子供の教育や身の回りの世話をめぐる葛藤、自らの病や衰えへの不安を率直に書き留め、混迷する時代の中で芸術作品に触れながら、自分らしく生きるための心構えと孤独を浮き彫りにする。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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二月二十七日 この間うちの風が珍しくきょうはやんでいる。おだやかな日なり。午後土蔵から『史籍集覧』の本箱を二階へもち出して貰う、全くガタガタになっている。が、匂いをかいでみると楠でそこに入っていた本はごく少ししか虫がくっていない。ちょいちょいと興味のあるものも見出す、永年の間に端本になったものもかなりある様子だ。手を洗い、羽織を着かえ足袋をはきかえ、ああちゃんにつれて貰って出初めを行う。染ものや迄がよかろうという、巴やの前ならちっとも坂がないから。一昨年十二月九日以来満十四ヵ月と十八日目。足もとは割合大丈夫だが道路が反射して白くてやりきれない。人の顔も。つむぎと小浜の染直し。つむぎ十五円小はま十九円びっくりした。四月からは十円以上に三割つくよし(税)裾まわし一枚分五円だそうだ。つい三年前長襦袢を染めたときは七円だった。
かえって早速お茶を二杯ものむ。やれやれと。お婆さんてこんななのかしらと笑った。歩くのに背中がくたびれるというのは初めて知った。
寿江子北向き室で往生し火鉢の灰を入れる騒動している。
きのう、チン、子供を生んだ、俵の中でクンクンいう声がしている。あんなひとのよい小さな犬が母になる、いじらしい。一匹は死んでいた由。
富雄に北斎の富士と歌麿のラッパをふく少女の版画を送る。本から切ってプワプワなのを、ふちどりさせたら二つで一円五十銭。一円位だろうという話だったが。
きょうから又日記をつけ始めよう。そして又何年もつづけよう。
昨夜はソボリンをのんですぐねむり、いい気持だった。夜中の一時すぎ目をさましおなかがすいているのに気がついて食堂へ出て行ったら寿江子も音で起き、牛乳をのみパンをたべるのを手つだってくれた。
隣組箱をこしらえなければと云っている。きょう、食料の購入券とそれにつかうゴム印が来た。(組長をやっているから)
○来月から外食券なしでは外で御米がたべられない。代用食だけ。
○帝大を寮制にするのだそうだ。