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TORENDIA

中毒

本文約9,800字 ・ 読了時間 約20分

あらすじ(AIが作成しました)

スタンダールの墓銘をめぐる思索から書き起こし、著者は自身の愛煙家としての日常や父の没落、女性との関係への執着を綴る。酒で身を滅ぼした父と重ね合わせつつ、自らの喫煙習慣を人生の倦怠を生きる手段と定義する。自身の体験を省みながら、平凡な人間の半生とそれを記述することの困難さについて思索を巡らせ、煙草と自己の存在を問い直すエッセイ的な側面を持つ私小説である。

織田作之助

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一

スタンダールは彼の墓銘として「生きた、書いた、恋した」

という言葉を選んだということである。

スタンダールについて語る人は、殆んど例外なしに、この言葉を引用している。まことにスタンダールらしい言葉、スタンダールの生涯を最もよく象徴した言葉だと、人は言う。たしかにその通りであろう。その点に関しては、私にはいささかの異議はない。

しかし、私はスタンダールはこんな墓銘を作らなかった方がよかったのではないかと思う。引用するのは後世の勝手だが、しかし、スタンダールを語るのに非常に便利な言葉、手掛りになるような言葉として引用されるようなものを、下手に残して置かない方が、スタンダールらしかったのではないかと、私は考えるのだ。

ことにそれが墓銘ときては、何か気障っぽい。余りにも感傷的なスタンダールが感じられて、いやなのだ。スタンダールとしても、後世引用されると思えば恐らくそんな墓銘を選ぶのを避けたに違いない。

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