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TORENDIA

浴衣小感

本文約3,800字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

江戸の文化文政期に成立した浴衣は、涼しさや便利さ以上に、その粋な美しさによって当時の人々に受け入れられ、独自の風俗として育まれた。水髪や横櫛といった髪型とともに、当時の江戸町方文化を象徴する装いとなっていた。しかし時代を経て現代では、かつての趣は失われ、浴衣という名の全く別の実用品へと変容したと論じる。著者はかつての浴衣が持つ直条模様の美しさを見直し、現代における新たな浴衣地の製作や、前時代の風俗についての考察を綴る。

木村荘八

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🎧 浴衣小感 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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一

浴衣がけは便利だといふ、無論便利だ。久しく外国へ行つてゐると夏は故郷の浴衣がけが恋しくなつてかなはないといふが、さもあらうと思ふ。便利で涼しい点では外国のどの夏衣裳にも勝るものだらう。

然したゞ便利で涼しいが故に起つたものかと云ふと、それは一つにはさうに相違ない。夏不便で涼しくないものは行はれるわけがない。しかしより以上に、それが衣裳としての一つの風俗を保つて今に行はれるわけは、美しいがゆゑに、それで猶発達したものと思ふ

――一体この浴衣又は浴衣がけといふ字は、いつ頃使ひ始めたものだらうか。この特殊な夏衣裳の沿革を一通り調べて見たらかなり面白からうといつも思つてゐながら、つい取り果さないのは、怠慢ながら、どのみち文化文政の頃にその風情が江戸の町家の粋人――といふか、または特殊なる識者――彼等の味覚に依つて鑑賞され、そこで、一つの「ゆかたがけ」といふ美術的にいつて立派な、まあ他の字でいへばあだな、いきな、それ迄の日本にはそこ迄はまだ無かつた極く微妙な味はひの風俗が、世の中に生じたものと思ふ。

その意味で、ゆかたがけは便利の涼しいものである、然しながら只それ故にのみ発祥した姿ではないと考へる。寧ろそれよりもこの姿から編み出せる「美しさ」――その味はひ――が時勢の人を刺戟して、そこで立派に生育した一つの風俗と考へるわけである。

他ならぬ不思議な時代、文化文政の産を思ふ上から、――

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