十八歳の花嫁
本文約830字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
戦地から一時帰休した青年は、仲人を通じて十八歳の娘と見合いをする。青年の両親は再出征を案じて結婚式を急ぐことに戸惑うが、娘は戦死の懸念を払拭するため即時の挙式を望み、両親を説き伏せる。慌ただしく式を挙げた翌日、青年は再び戦地へ戻り、残された若き花嫁は彼の老いた両親に仕える生活を始める。本作は、著者が友人から聞いたこの実話に基づき、娘の健気な心情を綴る。
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最近私の友人がたまたま休暇を得て戦地から帰って来た。○日ののちには直ぐまた戦地へ戻らねばならぬ慌しい帰休であった。
久し振りのわが家へ帰ったとたんに、実は藪から棒の話だがと、ある仲人から見合いの話が持ち込まれた。彼の両親ははじめ躊躇した。婚約をしてもすぐまた戦地へ戻って行かねばならぬからである。しかし、先方はそれを承知だと、仲人に説き伏せられてみると、彼の両親もそしてまた彼も萬更ではなかった。
早速見合いがおこなわれた。まだ十八になったばかしの、痛痛しいばかりに初々しい清楚な娘さんである。
その娘さんがお茶を立てるのを見ながら、自分は苦しいばかりの幸福感をのんでいたと、あとで彼は私に語った。話はすぐ纒った。
しかし、娘さんの両親は、結婚式はこんど晴れて帰還されてからにしたい。それまでは一先ず婚約という形式にしたいと申出た。なんといってもまだ若い、急ぐに及ばないという意見であった。いくらかの不安もあったろうか。
ところが、すっかりその娘さんが気に入ってしまった彼は、すぐ結婚式を挙げたいと駄々をこねた。娘さんの両親はどうしたものかと迷った。
しかし、娘さんは迷わなかった。結婚式を帰還するまでのばすのは、何か戦死を慮っているようで、済まないと、両親を説き伏せた。
二日のちにはもう結婚式が挙げられた。支度もなにもする暇もない慌しい挙式であった。そして、その翌日の夜には彼ははや汽車に乗っていた。再び戦地へ戻って行くためである。十八歳の花嫁はその日から彼に代って彼の老いた両親に仕えるのである。
×
私はこの話をきいて、いたく胸を打たれた。あるいはこの話は軍人援護の美談というべきものではないかも知れない。しかし、いま私は「私の見聞した軍人援護朗話」という文章を求められて、この話を書き送ることにした。この十八歳の娘さんのいじらしいばかりに健気な気持については、註釈めいたものは要らぬだろう。ひとはしばらく眼をつぶって、この娘さんの可憐な顔を想像してくれるがよい。
完