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TORENDIA

面会

本文約1,800字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

五年ぶりに応召の知らせを受けた旧友のSを送り出すため、語り手は烈風雨の中を面会場所の馬繋場へ向かう。広場は別れを惜しむ人々で溢れ、背の高い語り手も容易にSを見つけられず焦燥するが、大声で名前を呼ぶことで再会を果たす。両親も親戚もいないSは見張りの役を買って出ており、孤独な境遇の友がたった一人で見送りを待っていたことを知る。やがて出征の合図が響き、語り手は歩き出した友の姿を追いながら、雨中で熱い交流を交わす様子を描く。

織田作之助

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🎧 面会 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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ある朝、一通の軍事郵便が届けられた。差出人はSという私の旧友からで、その手紙を見て、はじめて私はSが応召していることを知ったのである。Sと私は五年間音信不通で、Sがどこにどうしているやら消息すらわからなかったのである。つまりその軍事郵便は五年振りに見るなつかしいSの筆蹟をあらわしていたのだ。しかも、それによれば、Sは明日第一線へ出発するというのである。××港から船に乗り込む前の二時間ばかり、××町の東三〇〇米の地点で休憩するから面会に来てくれというSの頼みをまつ迄もなく、私はSを見送る喜びに燃えた。

その前夜から、雨まじりのひどい颶風であった。面会の時間はかなりの早朝だったから、原稿を書く仕事で夜ふかしする癖の私は、寝過さぬ要心に、徹夜して朝を待つことにした。うっかり寝てしまうと、なかなか思った時間に眼が覚めないと心配したからだ。雨も風も容易に止まなかった。風速十三米と覚しき烈風が雨を吹き上げていた。家の前の池は無気味な赤さに鳥肌立っていた。だんだんに夜が明けて来ると、雨の白さが痛々しく見えて、私はS達の雨中の行軍を想いやった。

朝、風に吹き飛ばされそうになりながら、雨襖を突き進んで、漸く××町の東三〇〇米の馬繋場にやって来ると、既に面会の時間が始っていて、兵隊達はそれぞれの見送人の傘の中で慌しい別れを惜しんでいた。まるで洪水のような見送人の群で、傘、傘、傘、人、人、人の隙間を縫うて、私はSの姿を探し求めた。あちこちに××隊と書いた標識の棒が立っているのだが、墨が雨に流されて、字が判別しかねた。空しく探し求めていると、だんだんに私は胸騒ぎを覚えた。Sも私を待ち焦れているだろうと思うと、胸騒ぎは一層激しくなった。いつか私はびしょ濡れになりながら、広場のあちこちを駆けずり廻り、苦しいまでに焦燥を感じた。Sはどこにいるのだろう。私は人一倍背が高く、つまりノッポの一徳で、見通しの利く方なのだが、沢山の傘に邪魔されて、容易にSの姿が見つけられなかった。

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