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TORENDIA

四葉の苜蓿

本文約7,000字 ・ 読了時間 約15分

あらすじ(AIが作成しました)

夏を過ごす村で、かつて賑わったホテルが廃業し解体される。かつてその場所で踊った少女たちや、四葉の苜蓿を熱心に探した老婦人たちの姿を記憶に留める語り手は、変わりゆく風景の中で過去の面影を追う。ある夜、会堂での演奏会で不調に泣く少女に心動かされた語り手は、失われゆく「少女」という存在の純粋さや、時を超えて蘇る美しい情景の断片を、静かな郷愁とともに描き出す。

堀辰雄

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夏に先立つて、村の會堂の廣場には辛夷の木に眞白い花が咲く。まだ會堂に閉されてゐて、その花の咲いてゐる間、よくその木のまはりで村の子供たちが日曜日など愉しさうに遊んでゐる。その花が散つて、すつかり青葉になつた頃、その村に夏を過しに來た人々がその會堂に出たりはひつたりしはじめる。

その頃から、こんどは村の古いホテルの裏の塀に沿つて、村で一番美しいと云はれるさるすべりの木がこれも眞白い花を咲かせる。ホテルではその木を昔からホテルのだと云ひ、その木と道ひとつ隔てた便利屋では昔から自分の家のだと云ひ張つて、雙方讓り合はうとしないものだから、もう十年ばかりもホテルの塀の外に、便利屋の鼻つ先きに、どつちつかずの目立たない場所に、村でも一番美しいさるすべりの木だのに人々からもあまり氣づかれずに、そのためかへつて一層そのつつましい美しさを増させながら、いつも夏のはじめになると咲き續けてゐた……。

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英吉利の片田舍にでもありさうな inn と云つた感じの、家具なども古くて底光りのしてゐたやうなその村の古いホテルが、とうとう廢業して人手に渡つたといふ話を聞いたのは去年の夏のはじめだつた。

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