本文へ移動
TORENDIA

昭和四年の文壇の概観

本文約14,500字 ・ 読了時間 約30分

あらすじ(AIが作成しました)

昭和四年の文壇における社会現象を、新聞・雑誌等の出版資本の拡大や経済的側面との連関から解説する。通俗小説が読書界で勢力を増す一方、大衆文学は全盛期を過ぎて停滞する現状を描く。また、島崎藤村、十一谷義三郎、横光利一らの作品に見られる傾向を考察し、産業合理化の波が文壇に及ぼした影響や、作家と出版資本・ジャーナリズムとの力関係の変化、さらには文芸家協会の直面する危機を指摘する論考である。

平林初之輔

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 20

はしがき

社会現象の過程は、全体性においてのみ完全に理解することができるので、それを部分的に、局所的に理解することは不可能である。だから、昭和四年の文壇に起こった現象の過程も、他の社会現象との連関において、また、少なくも最近数年間の過程との連関においてのみ、はじめて理解することを許されるであろう。だが、ここではそういう企図ははじめから放擲せねばならぬ。私はただ若干の特徴的な事実を列挙し、それに対する簡単な解説を加えることだけで満足し、それ以上の仕事は読者自身に一任しておこうと思う。

それに私はいま正確な資料を前においてこの文章を起草しているのではなくて、思い出すままに筆をとっているのであるから、記憶の不正確をおそれて、具体的な記述に入ることはなるべく避けようと思う。また、ここに許された程度の紙面では、具体的記述にわたることは、実際にそうしようと思ってもできるものでない。

なるべく公平に見てゆこうと思うのだが、これも畢竟私の眼で見た公平にすぎないので、すべての人が私と同じ眼をもっていない以上不可能なことであろう。

一 通俗小説の勢力

平林初之輔の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本