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TORENDIA

「貝の穴に河童がゐる」

本文約550字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

泉鏡花による短篇小説は、奔放かつ古怪な筆致で綴られる。読み進めるうちに拭いがたい気味悪さを覚えさせるこの作品は、日本文学特有の味わいを持つ。読者によって恐怖を感じさせる怪奇性だけでなく、隠されたエロチックな要素が鮮烈に浮き彫りにされる。

堀辰雄

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🎧 「貝の穴に河童がゐる」 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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僕は讀んでゐるうちに何かしら氣味惡くなつてくるやうな作品が好きだ。そんな作品はめつたにあるものではないが。――

去年のいま頃である。

僕は「古東多万」第一號に載つた泉鏡花の「貝の穴に河童がゐる」と云ふ短篇を讀みながら、どうも氣味惡くなつて來てしかたがなかつた。

こんな筆にまかせて書いたやうな、奔放な、しかも古怪な感じのする作品は、あまりこれまで讀んだことがない。かう云ふ味の作品こそ到底外國文學には見られない、日本文學獨特のものであり、しかもそれさへ上田秋成の「春雨物語」を除いては他にちよつと類がないのではないかと思へる。

僕はこの短篇を讀んで氣味が惡くてならなかつたと云つた。すると僕の友人の中にこの短篇を「なんと色つぽいのだらう」と云つてゐる者があつた。僕はそれを聞いてちよいと虚を衝かれたやうな氣がした。そして自分の見落してゐた大きな要素に氣がついた。

萩原朔太郎さんが嘗つて僕にかう云つたことがある。「自分は怪談と云ふものを好まない。ちつとも怖いと思つたことがない。しかし。さう云ふ怪談にエロチックな要素が這入つてくると、それが妙に怖くなり出す。だから『牡丹燈籠』のやうな怪談だけは好きだ。」さう云ふ萩原さんの説は獨特なものかも知れぬ。しかし僕も、鏡花の作品に關するかぎり、その説の信奉者になるだらう。

完

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