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TORENDIA

春の筑波山

本文約3,700字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

明治三十一年の春、大町桂月は友人二人と共に筑波山への登頂を試みる。一行は土浦を経由して麓へ至り、男體山と女體山の二峰を巡る。道中で雲霧に包まれる幻想的な光景や、山岳特有の険しい道のり、古くからの伝説を体感しながら山頂を目指す。下山時には道を誤り岩場を転落する危難に見舞われつつも、なんとか麓の宿へ帰還する。道中では即興で詩歌を詠み交わし、帰路では限られた旅費を工面しながら、春の旅情と筑波山の風光を描く紀行文を綴る。

大町桂月

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🎧 春の筑波山 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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追羽子をつくばの山に上らむと思ひたちしは、明治二十四年の夏、富士山にのぼりし時の事なるが、荏苒たる歳月、つくばねの名に負ひて、ひい、ふう、みい、よ、いつ、六歳を數へ來て、都は春の風吹き、山色翠を添ふる今日この頃、少閑を得て、遂に程に上る。

横山達三、澤田牛麿の二子、午前五時迄に來りて余を誘ふ筈なれば、寢過ごしてはならずと、心して寢たれど、曉を覺えずといふ春眠いぎたなく、六時にいたりて、やつと眼覺めたり。これは大變と、飛び起きて、冷飯かき込み、行裝とゝのへて、これでよいと待てば、二子生憎來たること遲し。待つ身のつらさに、一絶を呻り出す。

此去春風二百程。青鞋好欲レ趁二新晴一。待レ君未レ至坐敲レ句。籬外流鶯時一聲。

詩成ると共に、二子至る。連日の雨は霽れたれど、空はくもりて、風寒き春の朝なり。千住、松戸を經て、我孫子まで徒歩し、そこより汽車に乘る。大利根を過ぐれば、筑波山近く孱顏を現はし、秀色掬すべし。一絶を作る。

又拭二涙痕一辭帝城一。江湖重訂二白鴎盟一。天公未レ使二吾儕死一。到處青山含レ笑迎。

土浦にて汽車を下る。一帶の人家、霞ヶ浦に接す。白帆斜陽を帶びて、霞にくれゆく春の夕暮いとあはれなり。笹本といふ旅館に一泊す。

明くれば、四月六日なり。路を北條に取り、神郡村を通りこせば、筑波山直ちに面に當りて屹立す。雙峰の天に聳ゆるを馬耳に譬ふるは、已に陳腐なり。強ひて此山を形容すれば、蝦蟇の目を張つて蟠るに似たりともいふべき乎。筑波の市街は、山腹、即ち蝦蟇の口の上に在りて、層々鱗次す。當年士女が此に來りて蹈舞せし歌垣の名殘は、今も絶えずして、筑波祠前に六箇の妓樓あり。旅館はわづかに三戸に過ぎず。春の日永の晝寢にもあきたるにや、遊女二三人、紐帶のしどけなき姿して樓前に草摘むも、山なればこそ。即興一句を賦す。

のどけさや傾城草つむ山の上

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