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TORENDIA

風船玉

本文約1,200字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

雨上がりの道を歩く著者は、足駄の破損に見舞われながらも、子どものために風船玉を買い求める。その道中で、風船玉を羨ましげに見つめる多くの子供たちと遭遇し、それらへの対応を通じて浮世の情景を綴る。帰宅後、買い求めた風船玉を子供たちへ分け与えるが、すぐに飛んで消えたり、しぼんだりしてしまう。親が子を喜ばせようとした束の間の触れ合いと、その儚さを描き出した随筆である。

大町桂月

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🎧 風船玉 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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ぱつと日がさして、風なきまゝに、運動にとて、電車を閑却して、家路さして歩く。雨餘の泥濘殘れり。危くも轉ばむとして漸く支へたるが、その拍子に、右足に穿きたる足駄の前齒拔けたり。それを入れむとして見れば、やれ/\前齒の入るべき溝の底より前へかけて、足駄の臺が一面に横に割れたれば、最早溝の用をなさず。新に買ふだけの錢は持たず。已むを得ず、片足だけは、一本齒にて、のそ/\たどりゆく。

路に風船玉を賣るものあり。子供にとて、五つばかり買ふ。下女とおぼしき女、四五歳ばかりの男の子をおぶひ半※[#「纏」の「广」に代えて「厂」、126-6]に負ひたるが、一つ買ひて子供にもたすより早く、子供誤つて絲をはなして、風船玉ふは/\と空に浮き上る。あれよ/\と言へど、甲斐なし。風船玉賣る男、氣の毒がりて、その代りに今一つ下女にやらむとすれど、下女辭して受けず。強ひて止まざるが、こんどは子供が承知せず。さきに買ひたるは青き玉なり。今、代りにやらむとするは赤き玉なり。赤は厭なりと、かぶり振る。出來て居るは、あいにく赤のみなれば、別に青玉をつくり、別に錢を拂ふ。子供は唯風船玉の面白きを知る。錢の貴さを知らず。さすがに、前の失敗にかんがみけむ、しつかりと握りつゝ、うれしげに何やら唱歌らしきもの歌ふ聲、次第々々に、風船玉と共に、霞みゆく。

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