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TORENDIA

比喩

本文約560字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

机に向かう二人の少年が、静かな時間の中で向き合う。一人は言葉にできない内面的な軽蔑と妄想を抱え、もう一人は宇宙の裏側に自分たちと同じ世界が存在するという不思議な感覚を語り始める。窓の外の山や室内にあるものを眺めながら、二人はそれぞれの思索を深めていく。この作品は、少年たちの間にある微妙な距離感や、現実に重なるもう一つの世界の可能性を巡る静かな交感を描く。

原民喜

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🎧 比喩 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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机を前にして二人の少年は坐ってゐた。ガラス窓の外には寒さうな山があった。話は杜絶え勝ちだった。時間がここでは悠久に流れてゐた。

「君は馬鹿だよ、僕は君を軽蔑してゐるのだが、ただ便宜上交際ってるのだよ。」と一人は腹の底でさう囁いたが、口に出しては云はなかった。仮りにこんなことが平気で云へて、相手も平気で聞き流して呉れたら、さぞ面白いだらうに、と彼は腹の底で妄想した。相手の少年は鼻で深い呼吸をしながら、何か別のことを考へてゐるらしかった。

「僕は妙な気がするよ、かうして君と僕と此処に坐ってゐるのと、恰度同じやうなものが、何処かこの宇宙の裏側にもう一つあるのではないかと、何時もそんな気がするのだ。」

相手が変なことを云ひ出したので、彼の注意も改まった。

「これは理窟でなしに、僕にたださう想へるのだよ。向ふ側に感じられる世界はガラスのやうに透明で静かだが、やはり僕達と同じもので、僕達と一向異らないのだ。」

彼は相手の言葉がよく解らなかったが、ただ黙って肯いた。

机、山、窓、二人の少年、それらのてんでな妄想、そしてその複写――彼は黙って相手の顔を眺めた。

相手の少年はそれから間もなく死んだ。

さうすると、もう一方の世界はどうなるのかしら――と彼は時々冷やかに考へた。しかし、それは二重の世界を打消さうとするのでもなかった。

完

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