TRENDIA CLASSIC

露伴の出世咄

内田魯庵

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ある時、その頃金港堂の『都の花』の主筆をしていた山田美妙に会うと、開口一番「エライ人が出ましたよ!」と破顔した。

ドウいう人かと訊くと、それより数日前、突然依田学海翁を尋ねて来た書生があって、小説を作ったから序文を書いてくれといった。学海翁は硬軟兼備のその頃での大宗師であったから、門に伺候して著書の序文を請うものが引きも切らず、一々応接する遑あらざる面倒臭さに、ワシが序文を書いたからッて君の作は光りゃアしない、君の作が傑作ならワシの序文なぞはなくとも光ると、味も素気もなく突跳ねた。

すると件の書生は、先生の序文で光彩を添えようというのじゃない、我輩の作は面白いから先生も小説が好きなら読んで見て、面白いと思ったら序文をお書きなさい、ツマラナイと思ったら竈の下へ燻べて下さいと、言終ると共に原稿一綴を投出してサッサと帰ってしまった。

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