転向
本文約10,500字 ・ 読了時間 約21分
あらすじ(AIが作成しました)
過去の友情や生き方に疑念を抱き始めた著者が、自己の転向という体験を綴る。かつて愛着を抱いた友人たちとの共鳴を腐敗と見なし、それらを拒絶して苦しむ著者は、道徳的な潔癖さと個人の真実を追い求める中で葛藤する。本書は、創作活動や批評を通じ、ショオやドストイェフスキイらの文学観に触れながら、自己の内部に住む精神的な葛藤を整理し、真に成長するための道を模索する過程を描く随筆である。
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一
過去の生活が突然新しい意義を帯びて力強く現在の生活を動かし初めることがある。その時には生のリズムや転向が著しく過去の生活に刺激され導かれている。そうしてすべての過去が「過ぎ去って」はいないことを思わせる。機縁の成熟は「過去」が現在を姙まし、「過去」が現在の内に成長することにほかならなかった。今にして私は「過去を改造する意欲」の意味がようやくわかりかけたように思う。
「過去」の重荷に押しつぶされるような人間は、畢竟滅ぶべき運命を担っているのであった。忘却の甘みに救われるような人間は、「生きた死骸」になるはずの頽廃者に過ぎなかった。潰滅よりもさらに烈しい苦痛を忍び、忘却が到底企て及ばざる突破の歓喜を追い求むる者こそ、真に生き真に成長する者と呼ばるべきであった。心が永遠の現在であり、意識の流れに永遠が刻みつけられていることを、ただこの種の人のみがその生活によって証明するだろう。
二
かつて親しくIやJやKなどに友情を注いだという記憶が私を苦しめる。彼らを「愛した」ゆえに悔やむのではない。「彼らの内に」自分を見いだしたことがたまらなくいやなのである。しかし私は自分の内に彼らと共鳴するもののあったことを――今なおあることを拒むことができない。それゆえになおさらその記憶が私を苦しめる。かつて私はあの傾向に全然打ち敗けていたに相違なかった。
けれどもまた彼らから断然冷ややかに遠のいた記憶が同じように私を苦しめる。(もちろんその苦しみはこの転向の二三年後に初まった。そうして恐らく新しい転向を準備してくれるのだろう。私はそれを望む。)――とにかく私は自分の愛があまりに狭く、あまりに主我的ではなかったかを疑い始めた。私は彼らの「傾向」を憎んでも人間を憎むべきではなかった。彼らの傾向を捨てても人間を捨てるべきではなかった。私は道を求めつつ道に迷ったように思う。
私は徹底を欲して断然身を処した。そうして今はその徹底のなかから不徹底の生まれ出たのを見まもっている。私は二つの苦しみのいずれからも脱れることができない。
三
何ゆえに私は彼らを愛したか。