本文へ移動
TORENDIA

文楽座の人形芝居

本文約4,700字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

文楽座の名人たちによる講演と実演を通じ、人形芝居の本質を論じる。人形の構造は首、手、足という単純な部分から成り、人形使いの動きによって命を吹き込まれる。三人の人形使いによる有機的な協力と、語り手や三味線との緊密な気合いの合致により、指揮者なきオーケストラのような統一が図られる。また、人間の動作から本質的なものだけを選択・純化する表現様式は、後の歌舞伎の型にも多大な影響を与え、芸術的な身体表現を創造している。

和辻哲郎

速度
🎧 文楽座の人形芝居 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 7

日本文化協会の催しで文楽座の人形使いの名人吉田文五郎、桐竹紋十郎諸氏を招いて人形芝居についての講演、実演などがあった。竹本小春太夫、三味線鶴沢重造諸氏も参加した。人形芝居のことをあまり知らない我々にとってはたいへんありがたい催しであった。舞台で見ているだけではちょっと気づかないいろいろな点をはっきり教えられたように思う。

あの人形芝居の人形の構造はきわめて簡単である。人形として彫刻的に形成せられているのはただ首と手と足に過ぎない。女の人形ではその足さえもないのが通例である。首は棒でささえて紐で仰向かせたりうつ向かせたりする。物によると眼や眉を動かす紐もついている。それ以上の運動は皆首の棒を握っている人形使いの手首の働きである。手は二の腕から先で、指が動くようになっている。女の手は指をそろえたままで開いたり屈めたりする。三味線を弾く時などは個々の指の動く特別の手を使う。男の手は五本の指のパッと開く手、親指だけが離れて開く手など幾分種類が多い。しかし手そのものの構造や動きかたはきわめて単純である。それを生かせて使う力は人形使いの腕にある。足になると一層簡単で、ただ膝から下の足の形が作られているというに過ぎない。

これらの三つの部分、首と手と足とを結びつける仕方がまた簡単である。首をさし込むために洋服掛けの扁平な肩のようなざっとした框が作ってあって、その端に糸瓜が張ってある。首の棒を握る人形使いの左手がそれをささえるのである。その框から紐が四本出ていて、その二本が腕に結びつけられ、他の二本が脚に結びつけられている。すなわち人形の肢体を形成しているのは実はこの四本の紐なのであって、手や足はこの紐の端に過ぎない。従って足を見せる必要のない女の人形にあっては肢体の下半には何もない。あるのは衣裳だけである。

和辻哲郎の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本