別離
本文約1,000字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
故郷へ帰る朝、別れを告げる心情を綴った詩。良い天気の日に去る辛さや、かつての家での記憶が次々と呼び起こされる。パラソルを振る相手の眩しさや、心に残る虹と花といった美しい記憶は、霙のようにいつか消え去るものとして意識される。野道を歩きながら空腹を覚え、水車の見える場所で別れを告げ、一人で先へと進んでいく。過ぎ去った日々への未練と、避けられない別離の寂寥感を淡々と、しかし切実に描き出す。
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1
さよなら、さよなら!
いろいろお世話になりました
いろいろお世話になりましたねえ
いろいろお世話になりました
さよなら、さよなら!
こんなに良いお天気の日に
お別れしてゆくのかと思ふとほんとに辛い
こんなに良いお天気の日に
さよなら、さよなら!
僕、午睡の夢から覚めてみると
みなさん家を空けておいでだつた
あの時を妙に思ひ出します
さよなら、さよなら!
そして明日の今頃は
長の年月見馴れてる
故郷の土をば見てゐるのです
さよなら、さよなら!
あなたはそんなにパラソルを振る
僕にはあんまり眩しいのです
あなたはそんなにパラソルを振る
さよなら、さよなら!
さよなら、さよなら!
2
僕、午睡から覚めてみると、
みなさん、家を空けてをられた
あの時を、妙に、思ひ出します
日向ぼつこをしながらに、
爪摘んだ時のことも思ひ出します、
みんな、みんな、思ひ出します
芝庭のことも、思ひ出します
薄い陽の、物音のない昼下り
あの日、栗を食べたことも、思ひ出します
干された飯櫃がよく乾き
裏山に、烏が呑気に啼いてゐた
あゝ、あのときのこと、あのときのこと……
僕はなんでも思ひ出します
僕はなんでも思ひ出します
でも、わけて思ひ出すことは
わけても思ひ出すことは……
――いいえ、もうもう云へません
決して、それは、云はないでせう
3
忘れがたない、虹と花
忘れがたない、虹と花
虹と花、虹と花
どこにまぎれてゆくのやら
どこにまぎれてゆくのやら
(そんなこと、考へるの馬鹿)
その手、その脣、その唇の、
いつかは、消えてゆくでせう
(霙とおんなじことですよ)
あなたは下を、向いてゐる
向いてゐる、向いてゐる
さも殊勝らしく向いてゐる
いいえ、かういつたからといつて
なにも、怒つてゐるわけではないのです、
怒つてゐるわけではないのです
忘れがたない虹と花、
虹と花、虹と花、
(霙とおんなじことですよ)
4
何か、僕に、食べさして下さい。
何か、僕に、食べさして下さい。
きんとんでもよい、何でもよい、
何か、僕に食べさして下さい!
いいえ、これは、僕の無理だ、
こんなに、野道を歩いてゐながら
野道に、食物、ありはしない。
ありません、ありはしません!
5
向ふに、水車が、見えてゐます、
苔むした、小屋の傍、