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TORENDIA

別離

本文約1,000字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

故郷へ帰る朝、別れを告げる心情を綴った詩。良い天気の日に去る辛さや、かつての家での記憶が次々と呼び起こされる。パラソルを振る相手の眩しさや、心に残る虹と花といった美しい記憶は、霙のようにいつか消え去るものとして意識される。野道を歩きながら空腹を覚え、水車の見える場所で別れを告げ、一人で先へと進んでいく。過ぎ去った日々への未練と、避けられない別離の寂寥感を淡々と、しかし切実に描き出す。

中原中也

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🎧 別離 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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さよなら、さよなら!

いろいろお世話になりました

いろいろお世話になりましたねえ

いろいろお世話になりました

さよなら、さよなら!

こんなに良いお天気の日に

お別れしてゆくのかと思ふとほんとに辛い

こんなに良いお天気の日に

さよなら、さよなら!

僕、午睡の夢から覚めてみると

みなさん家を空けておいでだつた

あの時を妙に思ひ出します

さよなら、さよなら!

そして明日の今頃は

長の年月見馴れてる

故郷の土をば見てゐるのです

さよなら、さよなら!

あなたはそんなにパラソルを振る

僕にはあんまり眩しいのです

あなたはそんなにパラソルを振る

さよなら、さよなら!

さよなら、さよなら!

2

僕、午睡から覚めてみると、

みなさん、家を空けてをられた

あの時を、妙に、思ひ出します

日向ぼつこをしながらに、

爪摘んだ時のことも思ひ出します、

みんな、みんな、思ひ出します

芝庭のことも、思ひ出します

薄い陽の、物音のない昼下り

あの日、栗を食べたことも、思ひ出します

干された飯櫃がよく乾き

裏山に、烏が呑気に啼いてゐた

あゝ、あのときのこと、あのときのこと……

僕はなんでも思ひ出します

僕はなんでも思ひ出します

でも、わけて思ひ出すことは

わけても思ひ出すことは……

――いいえ、もうもう云へません

決して、それは、云はないでせう

3

忘れがたない、虹と花

忘れがたない、虹と花

虹と花、虹と花

どこにまぎれてゆくのやら

どこにまぎれてゆくのやら

(そんなこと、考へるの馬鹿)

その手、その脣、その唇の、

いつかは、消えてゆくでせう

(霙とおんなじことですよ)

あなたは下を、向いてゐる

向いてゐる、向いてゐる

さも殊勝らしく向いてゐる

いいえ、かういつたからといつて

なにも、怒つてゐるわけではないのです、

怒つてゐるわけではないのです

忘れがたない虹と花、

虹と花、虹と花、

(霙とおんなじことですよ)

4

何か、僕に、食べさして下さい。

何か、僕に、食べさして下さい。

きんとんでもよい、何でもよい、

何か、僕に食べさして下さい!

いいえ、これは、僕の無理だ、

こんなに、野道を歩いてゐながら

野道に、食物、ありはしない。

ありません、ありはしません!

5

向ふに、水車が、見えてゐます、

苔むした、小屋の傍、

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