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TORENDIA

雲霧閻魔帳

本文約33,200字 ・ 読了時間 約67分

あらすじ(AIが作成しました)

伊勢の間の山で出会った五人の若者は、義賊として名を挙げることを誓い、互いに異名を名乗る。その後、各地を荒らし廻り世間を騒がせるが、やがて捕縛される。雲霧仁左衛門と名乗った十七歳の少年は、牢内で自身の生涯を顧みる。数年後、因縁の再会を果たしたかつての捕吏との対峙を経て、雪の降る関ヶ原にて、雲霧は自ら縄を受け入れる。彼らの宿命的な結びつきと、過酷な運命に翻弄される生き様を描く。

吉川英治

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人生・間の山

なるべく、縁起の吉い日にしようぜ。御幣をかつぐ訳じゃないが、物は縁起ということもあるし、お互い様に明日の首の座は分らない。こちとら、白浪渡世――

いうにゃ及ぶ。

さて、その日は?

そうよ。――初日の出の元日――あたりはどうだ。

なるほど、そいつアいい。

元日より縁起の吉い日はねえ理窟だ。――次には、場所だが。

その場所は、伊勢の間の山と決める。そして、年暮立ちに、各が、土地を飛び、正月の抜け詣りを装って、落ち合う事にしようじゃないか――というような約束が、何日からか、土地を離れた五人の間に、出来上がっていたのである。

発起人は、絵師の応挙の内弟子、その正月をとって、十七歳になる仁太郎だった。

大坂の鼬を誘って、大晦日の晩、約束の間の山へつき、そこの雲霧茶屋で待っていると、やがて、第二着が、駿府の羅宇屋煙管の五郎八、次にやって来たのが、浜松のお仮面屋の伜丹三郎。――一番遅く、夜明け近くに、江戸の本職小猿七之助が、これは贅沢に、数日前から流連していた二見の茶屋から、駕を打たせて、乗りこんできた。

「顔が、揃った」

と、挨拶になって――

「てまえ、大坂の鼬でござんす」

「あっしゃ、江戸の七で」

「これは初めまして」

「御高名は、雷の如く――」

「お互いに、お初様、何分、よろしくお引き廻しを」

などと、名乗って、

「さて、元の御商売は。また、お年は?」

と、順々に洗ってみると、会わないうちは、自分が一番年下だろうと思っていた仁太郎が、三番目で、羅宇屋煙管の五郎八が、三十一の年頭、江戸の七が二十二、四番目と五番目の鼬と丹三郎が、同じ年の十六だった。

「五人男だ」

と、八百屋の御用聞きでまた掻っ払いの名人、チビの鼬は、英雄じみた昂奮でいった。

初日の出が上る――

五人は、匕首を抜いて、

「さ、兄弟分の盃」

と、二の腕を切り、日の出より赤い血を、啜り合った。

「生きるも死ぬも、一心同体、これからは、お互いに、ケチな小稼ぎは慎んで、日本一の大泥棒になり合おうぜ。なあ兄弟」

「無論だ」

と、仁太郎は、羅宇屋煙管の五郎八に、答えて、

「だが――大泥棒になっただけじゃ、つまらない。何かしなければ」

「するとは」

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