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TORENDIA

ユリイカ・独言

本文約1,500字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

エドガー・アラン・ポーによる宇宙論『ユリイカ』の翻訳作業を通じて、執筆者が味わった神秘的な陶酔や思考の変遷を綴る。七年前の出会いから、海辺での友人との朗読、箱根の山中での読解、そして友人たちの協力を得て翻訳を完成させるまでの経緯を描く。真理と理性が習慣を打破する過程を体験し、翻訳という名の「魔宴」に憑りつかれたかのような熱狂と、完成に至るまでの友人たちとの交流を回想的に記す随筆である。

牧野信一

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🎧 ユリイカ・独言 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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習慣と称ぶ暴虐なる先入主を打破せんと欲する者は、多くの事柄が、単にそれに伴ふ習慣のと皺とに支へられて何等の疑念なく認容せられてゐるのを見るであらう。然しながら一度びこの仮面を剥いで、事を真理と理性との前に引き出して見るならば、自己の従来の判断が殆んど全く顛覆したといふ感じがすると共に、却つてそれが前よりもずつと確固たる基礎を得たと感ずるであらう。

…………………………

モンテーニュの「随想録」といふ本を購読して見ると以上のやうな言葉に出会つた。ポウの「ユリイカ」を翻くにつれて、僕の亢奮と歓喜と戦慄の奥底を揺がせたものを一言にして言ひ換へるならば、正しく凡ての習慣が真理と理性の前に引き据ゑられて、とどのつまりは神秘の極光に射抜かれたと云ふより他は無かつた。この場に於ける「神秘」を、僕は“Serpent of Eternity”の意訳から用ふるのであるが、神秘と永遠の分析に関して、凡そ意味ありげなる漠然たる言葉を排して、恢々たる煌星の姿を直言した斯の如き大演説に接した験しはなかつた。僕の偉大なる自慢の鼻“Nose-of-wax”は、まんまとへし折られたものの、遠く近く無何有に煌くアンドロメダは金粉となつて降り灑ぎ僕は何も彼も忘れて、光りの雨の中に恍惚とした。云ふを止めよう、どうやら白銀製の鼻が盛りあがつて来た感が強いだけだ。

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