春近き日
本文約690字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
冬の間に少女と仲よく遊んでいたお人形が、ある日しくしくと泣きながら自分をお母さんのもとへ帰してほしいと頼む。少女は戸惑いつつも、毎朝窓にくるべにすずめに言づけをするというお人形の願いを聞き入れ、約束の晩に村はずれへとお人形を連れて行く。そこへ美しい馬車が現れ、お人形は少女に別れを告げて馬車に乗り込み、そのままどこかへと走り去っていく。
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お母さんが、去年の暮れに、町から買ってきてくださったお人形は、さびしい冬の間、少女といっしょに、仲よく遊びました。
それを、どうしたことか、このごろになって、お人形は、しくしくと泣いて、お嬢さんに願ったのであります。
「どうか、私をお母さんのところへ帰してください。」と申しました。
少女は、どうしていいかわかりませんでした。お人形のお母さんがどこにいるかということもわからなければ、せっかく仲よく遊んだお人形に別れることも悲しかったからです。
「私は、お母さんに聞いてみます……。」と、少女は答えました。
すると、かわいらしいお人形は、目をまるくして、
「どうか、お嬢さま、そのことはだれにも話さないでくださいまし。」と、頼みました。
「おまえのお母さんは、どこにいらっしゃるの? それがわかれば、帰してあげてもいいわ。」と、少女は申しました。
お人形は、たいそう喜びました。
「毎朝、この窓のところへ、べにすずめがきます。あれに言づけしてもらえば、お母さんは、だれかきっと私を迎えによこしてくれます。どうかお嬢さま、私を明日の晩方、野原のところまでつれていってくださいまし。」と、真っ黒な目で見上げてねがいました。
その晩は、いい月夜でした。もうじきに春のくることを思わせました。
翌朝、べにすずめが窓にきて鳴きました。
晩方、少女は、お人形を抱いて村はずれへきました。まだ、遠くの山々には、雪が光っていました。このとき、どこからともなく美しい馬車が前へきて止まりました。お人形は、その馬車に乗って、お嬢さまにお別れを申しました。やがて、黒い馬は、美しい馬車を引いて、あちらへ駆けていってしまったのです。
完