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TORENDIA

嵐の夜

本文約3,000字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

秋の長閑な日、八歳の少女かねは三毛猫と遊びながら両親の帰りを待つ。突如として荒れ狂う嵐が村を襲い、帰宅した母も父の安否を確かめるために再び外へ飛び出す。暗闇の中で孤独と不安に震えるかねの前に、突如として白い髭の老人が現れる。少女は不思議な力に導かれるように海辺へと向かい、やがて来る嵐の果てと家族との再会を描く。

小川未明

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🎧 嵐の夜 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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父さんは海へ、母さんは山へ、秋日和の麗わしい日に働きに出掛けて、後には今年八歳になる女の子が留守居をしていました。

もとより貧しい家で、山の麓の小高い所に建っている一軒家で、三毛猫のまりと遊んで父さんや、母さんの帰るのを楽しみに遊んでいました。見渡す限り畑や圃は黄金色に色づいて、家の裏表に植っている柿や、栗の樹の葉は黄色になって、ひらひらと秋風に揺れています。うす雲の間から、洩れる弱い日影は、藁葺屋根の上に照って、静かな、長閑な天気でありました。やがて大暴風雨のする模様などは見えませんでした。栗林には人の声が聞えて、山雀を捕りに来たのでありましょう、鳥籠に山雀が二羽も三羽も入ってばたばたするのを下げながらもち竿を片手に持って、二三人の男の子が口笛を鳴らしながら、がさがさと落葉を踏んであちらへ行きました。またあちらの松林には茸狩の男女が、白地の手拭を被って、話し合いながらその姿が見えたり、隠れたりしています。また遥か田圃の方では、鎌の打ち振るたびにちらちらと光って、早稲を刈っている百姓の影も見えます。少女は紫色に鉄漿を染めた栗の実や赤く色づいた柿の実を筵の上に乱して、まりと一しょに何心地なく遊んでいます。

少女の名はかねと云いました。母さんや、父さんの帰るを待っているのであります。午後の天気は、そよそよと萩や、柿の葉を鳴らす風の少しあるばかりで、日本晴れのした好い日和でありました。

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