町の真理
本文約3,100字 ・ 読了時間 約7分
あらすじ(AIが作成しました)
わんぱく子のA坊と気の弱いB坊のせみ捕りをめぐるトラブル、美術館と博物館のどちらを鑑賞するかで悩む叔父と甥、そして死後に魂が重なった貧乏な男と金持ちの老人。三つの物語を収める本書は、人間の欲望や格差、価値観の相違を鋭く描き出す。それぞれ異なる登場人物が経験する出来事を通じて、生活の中に潜む矛盾や人生の真理を問いかけ、現代社会の冷酷さと人間の本質的な孤独を浮き彫りにする。
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せみ
B坊が、だれかにいじめられて、路の上で泣いていました。
「どうしたの?」と、わけをきくと、こうなのであります。
A坊と、B坊は、いっしょに遊んでいたのです。すると、みんみんぜみが飛んできて、頭の上の枝に止まりました。
二人は、家に走っていって、もち棒を持ってこようとしました。すると、日ごろから、強い、わんぱく子のA坊が、
「これは、僕のせみだから逃がしちゃいけないよ。番をしていておくれ。」と、命ずるように、B坊に向かっていいました。
清水良雄・絵[#「清水良雄・絵」はキャプション]
気の弱いB坊は、たとえ内心では、それを無理と感じても、だまって、うなずくよりほかはなかったのです。
「どうか、Aちゃんのくるまで、みんみんぜみが、逃げてくれなければいいが……。」と、B坊は、心配していました。なぜなら、もし、せみが、逃げたら、きっとA坊は、自分のせいにすると思ったから。
B坊は、上を向いて、せみを見守りながら、身動きもせず、じっとしていました。せみは、つづけて、ミン、ミン、ミン――と鳴きました。そして、鳴きやむと、思い出したように、遠方を目がけて、飛び去ってしまいました。うらめしそうに、B坊は、しばらく、飛び去ってしまったせみの行方を見守っていました。
そのとき、もち棒を持ったA坊が、息をきらしながら、あちらから駆けてきました。
「Bちゃん、せみはいる?」と、遠くから、こちらを見て叫びました。B坊は、なんとなく、すまなそうな顔つきをして、頭をふり、
「逃げてしまった。」と、答えました。
「うそだ! 君が、逃がしたのだろう……。」と、A坊は、すぐ、そばにくると難題をいいかけました。
「僕が、逃がしたのではないよ。」と、B坊は、あまりのA坊の邪推に、不平を抱きました。
「君は、番をしているといったじゃないか?」
B坊は、たしかにそういったから、だまっていました。
「君は、番をしているといったろう。このうそつき!」
こういって、A坊は、B坊をなぐったのです。
――話はこういうのでした。さあ、どちらに真理がありましょう?
博物館
「ねえ、叔父さん、上野へまいりましょう。」と、学生がいいました。