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TORENDIA

人間生活の矛盾

本文約18,900字 ・ 読了時間 約38分

あらすじ(AIが作成しました)

現代社会に溢れる矛盾の原因を生物学の視点から考察する。人類はかつて社会本能や階級本能によって団体生活を維持し調和を保っていたが、道具の進歩により団体が巨大化して淘汰が中絶した結果、これらの本能が退化し自己本位で自由を求める人間が増えたと論じる。著者は制度改革や革命ではこの根本的な本能の退化による破綻は解決できないと説き、教育による欠陥の補完こそが今後の課題であると展望する論考である。

丘浅次郎

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一

今日の世の中ほど人間のすることが互いに矛盾した時代はかつてあったであろうか。新聞紙は世間を写す鏡であるというが、日々の新聞に出て来る記事を比べて見ると、実に相矛盾することばかりである。賭博の最中へ警官が踏み込んで数名を捕えたという記事に並んで、十円の債券で千円の割増金をかち得た仕合せ者の肖像が出ている。わずか十円の才覚ができぬために母子三人が水に飛び込んだという項の隣りに、何とかの茶碗が一万円で売れたと書いてある。一方で支那の有名な小説を忠実に翻訳すると、他方では風俗を害するからというてその発売を差し止める、兵式の教師が国防の忽にすべからざることを説くと、学生らは国際精神に反するというてこれを排斥する。ダンスがはやれば、剣舞で驚かし、祭りの寄附金を出さぬと御輿で店先を毀す。数え上げたら際限がないほどに人間社会は矛盾で満ちているが、さて、一体これは何故であるか。かような世の中へ生れて来て初めから世の中はかようなものと思うている人々には何の不思議でもないかも知れぬが、少しく生物学でも修めて、他の社会生活を営む動物の生活状態を見聞した者にとっては、これは確かに大いなる疑問である。

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