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TORENDIA

理科教育の根底

本文約6,000字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

欧州大戦の影響で理科への関心が高まる中、表面的な知識の詰め込みに終始する現状の教育を批判する。真の科学的発展には、他国の模倣ではなく、独力で工夫する力を養うことが不可欠であると論じる。生徒の知的好奇心である研究心を育てるため、実験を通じて疑い、自ら考える教育への転換を提言する。また、研究に専念できる環境の整備など、社会全体の在り方の変革を説く。

丘浅次郎

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🎧 理科教育の根底 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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一

近頃は理科奨励の声がすこぶる高い。りっぱな理化学研究所が新設せられ、理科や医科の研究者には補助金が与えられ、地方の中学校、師範学校における物理化学の設備を完全にするために何十万円かの金が支出せられた。また理科教育研究会という新しい会ができて「理科教育」と題する特殊の雑誌までが発行せられるに至った。明治維新以来五十年の間、ほとんどかえりみられなかった理科教育が今日急にかく流行し出したのは何故であるかというに、これは無論ヨーロッパ大戦争の影響で薬品、染料、ブリキ、ガラス板、その他、種々の日用品の輸入が止って、日常の生活にはなはだしい不自由を感ずるに至ったからである。理科の進歩が、民族将来の発展にきわめて必要であることは、今日始ったわけではないが、今までは、国民全体が、このことを痛切に感ずるような機会に一度も出遇わなかったために、いつも目前の問題にのみ気を取られている政治家や実業家などは、理科の研究をもって、隙人の道楽仕事のごとくにみなし、少しもこれに注意を払わなかった。しかるに今回はからずも、その欠陥がいちじるしく現われたので、にわかに騒ぎ出し、足元から鳥が立ったごとくに、急に理科研究の奨励を唱え出したのである。

わが国現今の理化学全盛の状態は以上のごとくにして生じたものゆえ、無論一種の変態現象であって、一歩一歩順序を踏んで進み来ったわけではない。そのためでもあろうが、今日小学校や中学校で理科の授業を見るにいかにも急場の間に合せのごとく、ただ理科の範囲内の事実をなるべく多く教えて、生徒に覚えさせることにのみ力を用い、肝心の理科進歩の根底なる研究心の養成はすこぶる閑却せられている。折角の奨励も根底を忘れて枝葉のみに力をつくすようでは、その効果ははなはだ覚束ないもので、したがって、今日の理科熱も、暫時の後には、従来教育界に流行した他の熱と同様に冷却し去るのではなかろうかと思われる。真に理科の進歩をはかるならば、まずその根底を造ることに努めねばならぬ。

二

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