本文へ移動
TORENDIA

その一週間

本文約2,500字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

水曜日の正午、女から届いた相談したいという葉書を受け取った私は、飲み過ごしによる二日酔いと困窮の中でそれに対面する。重い心で友人から金を借り、読みかけの選集を一冊携えて下高井戸駅へと向かう。駅に到着した後、空腹と宿酔の頭を抱えたまま酒場に立ち寄り、ビールを飲んでから、秋の日の夕暮れが差す道を目的地へと歩みを進める。

中原中也

速度
🎧 その一週間 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 4

「御暇でしたら、一寸御相談したい事等御座居ますので、私の動く事についての事ですが、岩山さんともいろいろ考へたのですが、で、考へをおかし下さいませんでせうか、お待ちします、御目文字の上、」

かういふ、女からの葉書が舞ひ込んだのは、水曜日の正午であつた。私は前夜の飲過ごしでぐつたりして、少し卓子の割合には高過ぎる椅子に腰掛けて、煙草を喫つたり本を読みかけてみたり、と、急に思ひ出して此の日頃方々で受取つた名刺の整理をしたり、――要するに何の野心もなく、その日第一回の食事を済ましたばかりのところであつた。新聞も読まず、これといつての読書もせず、秋風のやうな気持になつてゐる此の頃であつてみれば、その、女の葉書といふは一大事件であつた。

まづ最初、その葉書を手にとつた時、私はにつこり笑つたものだ。「チエツ、またこのまづい字か……」といふ程の意味で、それでもその文字がいかにもその女らしいことには、私は何時でも微笑むのである。

中原中也の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本