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TORENDIA

初恋のやり直し

本文約1,500字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

小学校時代に心奪われた少女への思慕や、不条理な校長への反発、沖縄語を禁じる学校との対立を綴る。詩作と絵画に没頭する中で女学生との恋愛を経験するも、学校を去り婚約解消を経験する。苦難のさなか放浪生活を送るが、詩は常に支えとなり、やがて女学校に通うかつての少女との再会を果たす。本書は、詩を通じて初恋を成就させ、青春を取り戻すまでを描く自伝的な回想録である。

山之口貘

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🎧 初恋のやり直し / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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小学校の六年生になってからのこと、ぼくは机の前に座っていても、それは父や兄などの手前で、勉強しているふりをしているにすぎなかった。ある少女のことに気をとられていたからなのである。少女はしばしば、ぼくの家の近所に遊びに来た。そこには沼があって、その沼の水のなかに、少女は着物のスソをまくしあげてはいった。水すましやげんごろうが、彼女のスネのまわりを泳ぎまわり、彼女は腰をこごめて浮草などを、手にすくったりして遊んだ。

その少女が、いつも、ぼくの頭のなかにこびりついていて、机を前にしては勉強しているふりをしているうちに、中学の入学試験には落第してしまった。

そこで、一年を高等科ですごしたのであるが、中学の一年生になってまもなくのこと校長の修身の時間にいねむりをしてしまったのである。前夜は、家に事情があって一睡もしないで一里の道を歩いて登校したからなのだ。ぼくはびっくりして眼を覚したがそれは校長が、水さしの水をぼくの鼻にぶっかけたからなのであった。

その日から、出欠簿のぼくの氏名の上に、朱色で△の印をくっつけられて、「注意人物」の扱いを受けるようになったが、事情もきかずに、こんな仕打ちをした校長の教育は、そのまま、ぼくにとっては、学校に対する反感の教育になってしまったのである。

*

当時の中学には、「罰札」というのがあって小さな木の札に墨書してあったが、普通語(ヤマトグチ)を励行させるために、沖縄語(ウチナーグチ)を罰したのである。生徒は、つとめて、ヤマトグチを使ったが、持って生れたウチナーグチが、ふと、口をついて出ると罰札である。

しかし、注意人物のぼくなどは、意識的にウチナーグチを使ったりして、左右のポケットに罰札を集め、それを便所のなかへ棄てたりした。

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