盗難
本文約12,300字 ・ 読了時間 約25分
あらすじ(AIが作成しました)
N市の宗教支教会で雑用係を務める男が、ある奇妙な体験を語る。教会は増築費用の寄付を募り、多額の現金が金庫に保管されていた。ある日、主任宛に泥棒の予告状が届く。警戒していた最中、警察官を名乗る人物が現れ、教会に金庫を預かると申し出る。男が同行する隙に泥棒は現金を奪い去るが、事態は不可解な経緯を辿る。偽警官の出現や主任の金銭問題、そして男が泥棒から受け取った紙幣の謎が錯綜する実体験を描く。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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面白い話しがあるのですよ。私の実験談ですがね。こいつを何とかしたら、あなたの探偵小説の材料にならないもんでもありませんよ。聞きますか。エ、是非話せって。それじゃ至って話し下手でお聞きづらいでしょうが、一つお話しましょうかね。
決して作り話しじゃないのですよ。と、お断りする訳は、この話はこれまで、度々人に話して聞かせたことがあるのですが、そいつがあんまり作った様に面白く出来てるもんだから、そりゃアお前、何かの小説本から仕込んで来た種じゃないか。なんて、大抵の人が本当にしない位なんです。しかし、正真正銘偽りなしの事実談ですよ。
今じゃこんなやくざな仕事をしていますが、三年前までは、これでも私は宗教に関係していた男です。なんていいますと、一寸立派に聞えますがね。実は下らないんですよ。あんまり自慢になる様な宗教でもない。××教といってね、あなたなんか多分御承知ないでしょうが、まあ天理教や金光教の親類みたいなものです。尤も、宗旨のものにいわせれば、それや色々もっ体らしい理窟があるのですけれど。
本山、というほどの大げさなものでもありませんが、そのお宗旨の本家は××県にありまして、それの支教会が、あの地方の一寸大きい町には大抵あるのです。私のいましたのはその内のN市の支教会でした。このN市のは数ある支教会の内でも仲々はぶりのいい方でしたよ。それというのが、そこの主任――宗旨ではやかましい名前がついてますけれど、まあ主任ですね。それが私の同郷の者で古い知り合でしたが、そりゃ実にやり手なんです。といっても、決して宗教的な、悟りを開いたという様なのではなくて、まあ商才にたけていたとでもいいますかね。宗教に商才は少し変ですけれど、信者をふやしたり、寄附金を集めたりする腕前は仲々あざやかなものでしたよ。