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TORENDIA

麦畑

本文約4,000字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

麦畑で働くジャン・マデックは、妻の不貞を疑う老いた母親の言葉に心を乱す。やがて妻が地主の主人と林檎の樹の下で密会する様子を目の当たりにし、軍への召集を控えた不安も相まって、激しい怒りと疑念に駆られる。作業中に偶然にも二人の密やかな話し声と接吻の音を耳にした彼は、鎌を手に林檎の木陰へと向かう。

モーリス・ルヴェル Maurice Level

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🎧 麦畑 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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ジャン・マデックは、緩くり調子をとってさっくさっくと鎌を打ちこんでゆくと、麦穂は末端をふるわせ、さらさらと絹ずれのような音を立てつつ素直に伏るのであった。

ジャンは歩調を按排しながら、器用な手捌きで前へ前へと刈りこんで行った。背ろには刈られたあとの畑が鳶色の地肌を現わし、そのところどころに小石原があって、褐色になった麦藁が厚く毛羽立っていた。

年老った母親は、ジャンの後から腰をかがめて、散らばった落穂を拾いあつめていたが、彼女の重い木履を引きずっている足や、皺だらけの節くれだった手や、襤褸衣物を着たその胴体だけを見ると、まるで獣が四つ足で這っている恰好だった。

太陽が地平線から昇ると、炎熱があらゆるものを押しつつんで、田園全体が痲痺したようになり、そして耕地は爛熟した大きな果実のごとく、何ともいえない甘酸ぱい香気を発散するのであった。

婆さんは落穂をひろいながら、口の中でぶつぶつと呟いた。

「コレ、嫁は今時分まで何をしくさるだ。何時になったら来るかの」

「正午には皆んなの弁当をもって来るよ」

婆さんは肩をゆすぶって、

「何にしても、楽なもんじゃのう」

「なアに何家の嬶も同じことよ。彼女はここへ来ても、小舎にいても、せっせと仕事をしているだ」

「ふむ、彼様な仕事をな」

婆さんはなお地面を掻きながら、独りごとのようにいった。

「旦那は今朝はまだここへ来ねえようだの。大方彼女の傍にべたべたとくっついて、手助けでもしてござらっしゃるだろうさ」

ジャンは鎌の手を休めて、

「何いうだ」

「うんにゃ、何でもねえだよ。話がさ……ただ……」

ジャンはまた刈り進んで行った。が、婆さんはもう一度独りごとのように呟いた。

「お前の死んだ父親という人は、彼様な真似大嫌いでのう。あの人が野良へ出たあとでは、わしは只の一度だって、旦那の話相手になんかなったことねえだよ」

ジャンはまた顔をあげた。

「何だっておれに其様な話をするだ」

「何でもねえがの、父親はお前なんかよりも気が廻っていたっていうことよ」

するとジャンはすっくと立ち直って、

「な、何だって? そねえなこと云うからには、何か理由があるべえ」

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