むかし、あるところに、ひとりの女の子がおりました。この子はなまけもので、糸をつむぐのが大きらいでした。おかあさんがいくらいっても、どうしてもいうことをききませんでした。とうとう、おかあさんはがまんがしきれなくなって、あるとき、腹だちまぎれに女の子をぶちました。すると、女の子はわあ、わあ声をあげて、泣きだしました。
ちょうどそこへ、お妃さまが馬車にのってとおりかかりました。お妃さまは、泣き声をききつけて、馬車をとめさせました。それから、うちのなかへはいっていって、おかあさんに、
「往来まで泣き声がきこえますが、どうしてそんなにぶつのですか。」
と、たずねました。
するとおかあさんは、じぶんのむすめがなまけてばかりいることをひとに知られるのをはずかしく思ったものですから、こういいました。
「この子に糸くりをやめさせることができないものでございますから。この子は年がら年じゅう、糸くりをしたがっておりますが、わたくしどもは貧乏で、アサを手にいれることができないのでございます。」
それをきいて、お妃さまがこたえました。
「あたしは糸くりの音をきくのが大すきです。あの、糸車のブンブンいう音をきくぐらい、たのしいことはありません。おまえのむすめを、いますぐお城へよこしなさい。あたしのところには、アサがたくさんありますから、すきなだけ糸くりをさせてやりましょう。」
おかあさんは心のそこからよろこびました。こうして、お妃さまは女の子をいっしょにつれていきました。
お城へつきますと、お妃さまは女の子を上の三つのへやにつれていきました。見れば、どのへやにもそれはそれはみごとなアサが、床から天井までぎっしりつまっています。
「さあ、このアサをつむいでおくれ。」
と、お妃さまがいいました。
「これをのこらずつむいでしまったら、あたしのいちばん上のむすこのおよめさんにしてあげますよ。おまえは貧乏ですけど、そんなことはかまいません。いっしょうけんめいせいだしてはたらくことが、なによりの嫁入りじたくですからね。」