ある夏の朝のことです。ちびの仕立屋さんが窓ぎわの仕立台にむかって、いいごきげんで、いっしょうけんめい、ぬいものをしていました。
すると、ひとりのお百姓さんのおかみさんが通りをやってきて、
「じょうとうのジャムはどうかね、じょうとうのジャムはどうかね。」
と、よばわりました。
この声が、ちびの仕立屋さんの耳に、いかにも気持ちよくひびいたのです。それで、仕立屋さんは小さな頭を窓からつきだして、よびとめました。
「ここへあがってきてくれよ、おかみさん、その荷がからになるぜ。」
おかみさんはおもいかごをかかえて、階段を三つあがって、仕立屋さんのところへきました。そして、いわれるままに、ジャムのつぼをのこらずあけてみせました。仕立屋さんはそのつぼをみんなしらべて、いちいちもちあげては、鼻をくっつけてみました。そのあげくのはてに、こういいました。
「よさそうなジャムだね、おかみさん。四ロート(一ポンドの約三十分の一)ばかりはかっておくれ。なに、四分の一ポンドぐらいあったってかまやしないよ。」
たくさん買ってもらえるとばかり思っていたおかみさんは、仕立屋さんのくれというだけをはかってわたしましたが、ぷんぷんおこって、ぶつぶついいながらいってしまいました。
「このジャムは、神さまがおれにめぐんでくださったんだ。」
と、仕立屋さんは大きな声でいいました。
「これで強い力をさずけてくださるんだ。」
仕立屋さんは戸だなからパンをだしてきて、大きなパンのかたまりからひときれ切りとって、その上にジャムをぬりつけました。
「こいつはにがくはないだろう。だが、食べるまえに、このジャケツをしあげちまおう。」
と、仕立屋さんはいいました。
そこで、仕立屋さんはパンをじぶんのわきにおいて、またぬいはじめました。けれども、うれしいものですから、つい、ぬいかたがだんだんあらくなってきました。
そのうちに、ジャムのあまいにおいが、ハエのたくさんとまっている壁をつたっていきました。ハエはにおいにさそわれて、パンの上にいっぱいあつまってきました。
「やい、やい、だれがきさまたちにきてくれっていった。」