TRENDIA CLASSIC

いさましい ちびの仕立屋さん

グリム Grimm

1 / 13

ある夏の朝のことです。ちびの仕立屋さんが窓ぎわの仕立台にむかって、いいごきげんで、いっしょうけんめい、ぬいものをしていました。

すると、ひとりのお百姓さんのおかみさんが通りをやってきて、

「じょうとうのジャムはどうかね、じょうとうのジャムはどうかね。」

と、よばわりました。

この声が、ちびの仕立屋さんの耳に、いかにも気持ちよくひびいたのです。それで、仕立屋さんは小さな頭を窓からつきだして、よびとめました。

「ここへあがってきてくれよ、おかみさん、その荷がからになるぜ。」

おかみさんはおもいかごをかかえて、階段を三つあがって、仕立屋さんのところへきました。そして、いわれるままに、ジャムのつぼをのこらずあけてみせました。仕立屋さんはそのつぼをみんなしらべて、いちいちもちあげては、鼻をくっつけてみました。そのあげくのはてに、こういいました。

「よさそうなジャムだね、おかみさん。四ロート(一ポンドの約三十分の一)ばかりはかっておくれ。なに、四分の一ポンドぐらいあったってかまやしないよ。」

たくさん買ってもらえるとばかり思っていたおかみさんは、仕立屋さんのくれというだけをはかってわたしましたが、ぷんぷんおこって、ぶつぶついいながらいってしまいました。

「このジャムは、神さまがおれにめぐんでくださったんだ。」

と、仕立屋さんは大きな声でいいました。

「これで強い力をさずけてくださるんだ。」

仕立屋さんは戸だなからパンをだしてきて、大きなパンのかたまりからひときれ切りとって、その上にジャムをぬりつけました。

「こいつはにがくはないだろう。だが、食べるまえに、このジャケツをしあげちまおう。」

と、仕立屋さんはいいました。

そこで、仕立屋さんはパンをじぶんのわきにおいて、またぬいはじめました。けれども、うれしいものですから、つい、ぬいかたがだんだんあらくなってきました。

そのうちに、ジャムのあまいにおいが、ハエのたくさんとまっている壁をつたっていきました。ハエはにおいにさそわれて、パンの上にいっぱいあつまってきました。

「やい、やい、だれがきさまたちにきてくれっていった。」

グリム Grimmの他の作品