手なしむすめ
本文約7,700字 ・ 読了時間 約16分
あらすじ(AIが作成しました)
貧困に陥った粉ひきが、悪魔との取引で娘を失う危機に瀕する。信心深い娘は悪魔の魔の手から逃れるために自らの両手を捧げるが、その潔白さゆえに守られる。過酷な運命を辿りながらも森でひっそりと暮らす娘と、妻と子を探し求めていた王が出会い、再会するまでを描く。神の加護を信じ、苦難を乗り越えて家族の絆を取り戻そうとする物語である。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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ある粉ひきの男が、だんだん貧乏になりました。そして、とうとうしまいには、粉ひきの水車と、そのうしろにはえている一本の大きなリンゴの木のほかには、なにひとつないようになってしまいました。
あるとき、粉ひきが森にはいって、たきぎをとっていますと、見かけたことのない、ひとりのおじいさんが粉ひきのところへやってきて、
「おまえは、なんでそんなにほねをおって木を切っているのだね。おまえが、水車のうしろに立っているものをわしにくれると約束すれば、わしはおまえを金持ちにしてやろう。」
と、いいました。
(それは、あのリンゴの木のことにちがいない。)
粉ひきはこう考えましたので、
「いいですよ。」
と、こたえて、その知らない男に証文を書きました。
すると、その男はあざけるようにわらいながら、
「三年たったら、またきて、わしのものをもっていくぞ。」
と、いって、それなりどこかへいってしまいました。
粉ひきがうちへかえってきますと、おかみさんがむかえにでて、いいました。
「どうしたんだろうねえ、親方。いったいどこから、お金がだしぬけにうちんなかへはいってきたんだろうねえ? そこらじゅうの箱が、きゅうに、みんなお金でいっぱいになってしまったじゃないか。だれももってきたわけじゃなし。どうしたわけなんだか、あたしにゃさっぱりわからないよ。」
すると、粉ひきはこたえていいました。
「そりゃあ、森のなかでおれがであった、どこかの男のやったことさ。なにしろ、そいつはおれに宝ものをうんとくれるって約束をしたんだからな。そのかわり、おれは水車のうしろに立ってるものをやるって証文を書いたんだ。あの大きいリンゴの木なら、やったってかまやしないさ。」
「まあ、おまえさん。」
と、おかみさんはぎょっとしていいました。
「それは悪魔だよ。そいつのいうのはリンゴの木じゃなくて、うちのむすめのことなんだよ。あの子はちょうど水車のうしろに立って、庭をはいていたんだもの。」
その粉ひきのむすめというのは、まことに美しい、信心ぶかい子でした。むすめは、それからの三年間というものは、神さまをうやまい、おこないをつつしんでくらしました。