むかし、あるところに、おかみさんに死なれたひとりの男と、だんなさんに死なれたひとりの女とがおりました。この男には、ひとりのむすめがありました。女にもひとりのむすめがありました。むすめどうしはおたがいに知りあいでした。
ある日、ふたりはいっしょに散歩にいったかえりに、女のほうの家へよりました。すると、女が男のほうのむすめにむかっていいました。
「いいかい、あんたのおとうさんにこういっておくれ。わたしが、おとうさんのおよめさんになりたいってね。そうすりゃ、あんたにはまい朝牛乳で顔をあらわせてあげるし、ブドウ酒ものませてあげるよ。といっても、うちのむすめには水で顔をあらわせて水をのませておくけどね。」
むすめはうちへかえって、女のいったことを、そのままおとうさんに話しました。すると、おとうさんはいいました。
「どうしたもんだろう。よめをもらうのはうれしいことだが、そのかわり、苦労もあるからな。」
おとうさんは、どっちとも心をきめかねましたので、とうとう、じぶんの長ぐつをぬいで、いいました。
「この長ぐつをもってくれ。こいつには底に穴がひとつあいている。こいつを屋根うらべやにもっていって、大きなくぎにかけて、なかに水をつぎこんでみてくれ。もし水がもらなかったら、もういちどよめさんをもらうことにしよう。だが、もしももったら、よめさんをもらうのはやめだ。」
むすめは、いいつけられたとおりにしました。ところが、水のために穴がちぢまってしまって、長ぐつのなかは上まで水がいっぱいたまりました。
むすめは、おとうさんにこのことを話しました。おとうさんがじぶんでそこへのぼっていってみますと、たしかにむすめのいうとおりです。そこで、さっそくその後家さんのところへいって、よめになってくれ、ともうしました。
こうして、結婚式があげられました。