あるお金持ちのうちで、そのうちのおくさんが病気になりました。おくさんは、もういよいよじぶんはだめだと感じましたので、ひとりむすめの小さい女の子をまくらもとによびよせて、こういいました。
「あのね、いつまでも神さまを信じて、すなおな心でいるんですよ。そうすれば、神さまは、いつもおまえのそばについていてくださるからね。おかあさんもおまえを天国から見まもっていて、おまえのそばをはなれませんよ。」
おかあさんはこういって、目をつぶりました。そして、そのまま、この世をさってしまったのです。
女の子は、まい日、おかあさんのお墓のところへいっては、泣いてばかりいました。でも、神さまを信じて、すなおな心でいました。
やがて、冬になりますと、雪がそのお墓の上に白い布をひろげました。それから、春になって、お日さまがその布をとりのけるようになったころ、お金持ちのうちには、またべつのおくさんがきました。
こんどのおくさんは、じぶんのむすめをふたりつれてきました。そのむすめたちは、顔だけは白くてきれいでしたが、心のなかときたら、ひねくれていて、まっ黒でした。ですから、かわいそうなままむすめの女の子にとっては、それからは、つらい日がまい日つづくことになりました。
「このあほうなガチョウむすめったら、うちんなかにすわりこんでいるよ。」
と、まま母やそのむすめたちが口ぐちにいいました。
「ごはんが食べたかったら、だれだってじぶんでかせぐんだよ。さあ、さっさといって、女中といっしょにおはたらき。」
こういうと、みんなは、女の子のきていたきれいな着物をぬがせて、そのかわりに、ネズミ色の古ぼけたうわっぱりをきせて、木ぐつをはかせました。
「ちょいと、この高慢ちきなお姫さまをごらんよ。ずいぶんおめかししたこと。」
みんなはこうはやしたてながら、大わらいをして、女の子を台所につれていきました。
それからというものは、まい日まい日、女の子はつらいしごとをしなければなりませんでした。朝は日のでるまえにおきだして、水をはこび、火をもやし、煮ものをし、せんたくをしました。