むかしむかし、ひとりの仕立屋さんがおりました。仕立屋さんは三人のむすこと、それから、ただ一ぴきのヤギをもっていました。
ところでこのヤギは、そのお乳でみんなをやしなっていたのですから、よいえさをもらわなければなりません。それで、まい日草原へつれだしてもらいました。むすこたちも、じゅんじゅんにこの役めをやっていました。
あるとき、いちばん上のむすこが、それはそれはみごとな草のはえている墓地にヤギをつれていって、草を食べさせたり、そこらをとびまわらせたりしました。
やがて日がくれて、家へかえるころになりましたので、いちばん上のむすこは、
「ヤギや、おなかはいっぱいかい。」
と、たずねました。
すると、ヤギはこたえていいました。
おなかはいっぱいだ
もうひとっ葉もいらないよ メエ メエ
「それじゃ、うちへかえろう。」
と、むすこはいいました。
それから、むすこはヤギのつなをつかんで、ヤギ小屋のなかへつれていき、そこにしっかりとつなぎました。
「どうだな、ヤギはえさをたくさん食べたか。」
と、年とった仕立屋さんがたずねました。
「ええ、ヤギはおなかがいっぱいで、もうひとっ葉もいらないんですって。」
と、いちばん上のむすこがこたえました。
けれども、おとうさんはそれをじぶんでたしかめようと思って、ヤギ小屋へおりていきました。そして、かわいいけものをなでながら、
「ヤギや、おまえは、ほんとうにおなかがいっぱいかい?」
と、きいてみました。
すると、ヤギはこたえました。
なんでいっぱいになるもんかい
お墓の上をとんでいただけで
葉っぱなんか一枚もありゃあしなかった メエ メエ
「なんてことだ。」
と、仕立屋さんはさけびざま、かけあがっていって、むすこにむかって、
「やい、このうそつきめ、ヤギは腹がいっぱいだなんていいやがって、ひぼしにしたじゃないか。」
と、いいました。そして、仕立屋さんは腹だちまぎれに、壁からものさしをとって、むすこをピシピシうって、家から追いだしてしまいました。