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TORENDIA

傷心

本文約5,200字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

恋愛において女性の生涯は愛そのものであり、一度心に深い傷を負うと回復しがたい。アイルランドの愛国者と恋に落ちた女性は、彼が死刑に処されたことで絶望の淵に沈む。周囲の慰めも虚しく、のちに別の男性と結婚して土地を離れるものの、心は元の恋人の思い出に支配されたままであった。彼女は癒えぬ憂愁を抱えたまま衰弱し、やがて失恋という心の病が原因でこの世を去ることとなる。

ワシントン・アーヴィング Washington Irving

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🎧 傷心 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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わたしは聞いたことがない

悩みのないまことの愛というものを。

世にもかぐわしい春の書物バラの花びらにも似た愛の心を

毛虫のように悩みは蝕む。

――ミドルトン

たいていの人は、年をとって青春の感受性を失ってしまったり、あるいは真実の愛情のない放埒な遊蕩生活をしたりして育つと、恋物語をあざわらい、恋愛小説を小説家や詩人の単なる虚構にすぎないと考えるものである。わたしは人間についていろいろと観察してみた結果、その反対だと考えるようになった。わたしの信ずるところでは、たとえ人間性の表面が浮世の苦労のために冷たく凍ってしまい、あるいは社交術によってただ無意味に微笑んでいるばかりになろうとも、眠っている火が、どんなに冷たい胸でもその奥にひそんでおり、一旦燃えあがれば、はげしく燃えさかり、ときには人を滅ぼすほどにもなるのだ。じじつ、わたしはあの盲目の神キューピッドの真の信者で、その教えるところをすべて信奉している。打ちあけて言えば、わたしは、人が失恋して心が傷つき、命を絶つことさえあると信ずるのだ。しかし、わたしはそのような恋わずらいが男性にとっては致命的になることが稀れだと思う。ただ、多くの美しい女性が、若くして力が萎え、そのためにあの世に旅立たなければならなくなるとかたく信ずるのである。

男は利害と野心との動物である。男は生れつきこの世界の闘争と喧騒とのなかに飛びこんでゆくようにできている。恋愛はただ青春時代の装飾か、あるいは人生劇の幕間に歌われる歌にすぎない。男は名声をもとめ、財産をもとめ、世間の人に重んじられようとし、ほかの人間を支配しようとする。しかし、女性の全生涯は愛の歴史である。心こそ彼女の世界である。そこにこそ女性の野心が絶対の支配権を得ようとし、そこにこそ女性の貪欲が隠れた財宝を探しもとめるのだ。女は愛情を危険にさらす。心の全てをかけて愛の貿易をする。そしてもし難破したら、絶望だ。心が破産したことになるのだから。

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