妻
本文約8,000字 ・ 読了時間 約17分
あらすじ(AIが作成しました)
大規模な投機に失敗し、一文なしになったレスリーは、愛する妻メアリに真実を告げることを極度に恐れていた。彼女は華やかな環境で育った美貌の才媛であり、突然の困窮に耐えられるはずがないと思い込んでいたためである。しかし、親友の勧めで田舎家での質素な生活を余儀なくされた際、レスリーの想像を覆す光景が待っていた。夫を深く愛する妻が、逆境においても変わらぬ笑顔で彼を迎え入れ、新たな生活の中で支えようとする姿を描く。
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深海の宝の貴さも、
女の愛につつまれた
男のひそかな慰めには及ばない。
ただ家に近づくだけで、わたしは幸福の気配を感ずる。
結婚はなんと甘美な香りをはなつものか。
菫の花壇もそれほど芳しくはない。
――ミドルトン
わたしはしばしば機会があって、女性が忍耐強く、抗しがたいような逆境にたえてゆくのを見たことがある。男性の心をひしぎ、一敗地にまみれさせる災難が、女性の場合には、かえって全精力を呼びおこし、気高く大胆に、ときには崇高にさえするのだ。か弱くやさしい女が、順調な人生の路をたどっているあいだは、いかにも柔弱で、ひとの力に頼り、ちょっとでもつらいことがあるとぴりぴりとそれを感じていたのに、一旦不幸にあうと、たちまち心をはげまして、夫をなぐさめ、ささえ、一歩もたじろがずに、肌をさす疾風のような逆境をしのんでゆく姿は、何ものにもまして人の胸をうつものである。
つる草は、そのしとやかな葉をかしわの木にまきつけ、その木のおかげで高くのぼり、日の光を受けることができるのだが、いざその頑丈な木が雷にうたれて引きさかれると、そのまわりにすがりつき、愛撫の手をさしのべ、折れた枝をむすびつけてやるものだ。それとおなじように、すばらしい神の摂理によって、女は、夫が幸福なあいだはただ夫にたより、その飾りになっているにすぎないが、突然の災難がおそいかかってきたときには、夫のために支柱となり、なぐさめとならなければならないのだ。彼女は夫の荒れはてた心の奥に手をのばし、うなだれた頭をそっとかかえ、傷ついた心臓に包帯をしてやらなければならない。