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TORENDIA

クラム・ベーク

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

アメリカ東海岸ニュー・イングランド地方に伝わる野外料理「クラム・ベーク」について綴る。焼いた石と熱い熾火の上に生の海藻を敷き詰め、その熱気で貝や蝦、野菜を蒸し上げる独特の調理法を詳述する。磯の香りと海藻の塩味が引き立つこの料理の味わいや、現代まで残る伝統としての背景に触れ、美食を愛でるアメリカ人の一面を考察する随筆である。

中谷宇吉郎

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🎧 クラム・ベーク / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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米國の東海岸、ニュー・イングランド地方には、流石に古い傳統が殘っていて、ジャズの國アメリカでは一寸考えられないような料理がある。「クラム・ベーク」というのが、その一つであって、今度の會議の懇親會で、初めて食べてみたが、なかなか風趣のある料理である。これは東部でも、海岸地方にだけ殘っているもので、日本でも珍しい料理の一つであろう。

料理は野外でやるので、廣々とした草地の中に、まず大きい石塊を並べて、四角形の場所を作る。その中は六尺に九尺くらいあって、その中で太い丸太をどんどん燃やす、下の地面も周圍の石塊も、それですっかりやける。丸太が燃え切った頃には、眞赤なおきが、この六尺と九尺の區劃の中に一杯並ぶ。このおきと燒け石との上に、ひじきのような褐色の海藻を、厚さ二寸くらいに一杯に敷きつめる。これは生の海藻をそのままおきの上に載せるのであるから、湯氣がもうもうと立って、なかなか壯觀である。

この海藻の上に、蝦と玉蜀黍と野菜とを載せ、その上にまた海藻を敷く。そしてその上にクラムという貝を並べて、上からテント用のズックですっかり蔽ってしまう。そして何時間か待っていると、海藻から出る蒸氣で全部のものがすっかり蒸される。その頃を見はからって、ズックをあけてみると、まず貝が丁度いいくらいに蒸されている。それを取り出してまたズックで蔽っておくと、貝を食べているうちに、次の蝦だの玉蜀黍だのが、いい工合に蒸される。

クラムという貝は、烏貝のような形で、大きさは、四分の一くらい、色はあさりに似ている。この邊の海岸の砂濱のところで、いくらでもとれるものの由である。見たところ、下等な貝であるが、こういう蒸し方だと、肉も軟くなり、海藻の匂いが浸み、また海藻から出る鹽味が丁度いい工合について、なかなか美味い。

これを錢湯の洗い桶くらいの大きさのものに、一杯入れてくれる。別に味は何もつけないで、液状バターに浸しながら食べるのであるが、磯のかおりがあって、食通には大いに喜ばれそうな味である。

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