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TORENDIA

クロス・ワーズ・パズル

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

夏期休暇中の娘が新聞の懸賞クロス・ワーズ・パズルに挑む様子から、アメリカの新聞で人気を博す高額懸賞パズルの仕組みを解き明かす。容易に見える問題の中に仕掛けられた、正解を導くための言語的な罠について言及する。二択の不確定要素が積み重なることで、理論上は膨大な数の答案が必要となる懸賞の過酷な実態を説く。

中谷宇吉郎

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🎧 クロス・ワーズ・パズル / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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夏期コースがすんで、やっと休みになったというのに、娘の一人が、机にしがみついて、何か一所懸命にやっている。「試驗がすんだから、勉強を始めているのかい」と冷やかしたら、「そうじゃないのよ。今三千ドル儲けている最中よ」という。見ると、新聞のクロス・ワーズ・パズルである。

アメリカの新聞には、よくこの手があって、簡單そうなクロス・ワーズ・パズルを出して、正解者には何千ドルという賞金を出すと書いてある。今の場合は、それが三千ドル、即ち百八萬圓の懸賞である。

いくらアメリカでも、百萬圓といえば、相當な大金で、それが新聞の切拔きを一枚送れば貰えそうなのであるから、皆ちょっと誘惑されるのも無理はない。しかも見たところ、まことに簡單そうに見えるのである。

事實、大部分は非常に簡單で、すらすらと解ける。むつかしそうなところへは、丁寧に初めから字がはいっている。それで皆出來たつもりで投書するのであるが、それがなかなかあたらない。何千人か、多分、何萬人という人が、日曜ごとのこのパズルに應募するのに、滅多に賞金を貰う人がいない。もっともそう簡單に貰えたら、新聞社のほうで困るわけである。

實はこのパズルには祕密があるので、なかなかあたらないようになっているのである。それは言葉の頭か尻尾かに、鍵にはまらない字が一つはいっている。日本流に直していうと、たとえば「Xミナリ」という言葉があって、ミナリは横の言葉からすぐ分るようになっている。そしてこの言葉の縱の鍵は「遠くに聞える……の音」とある。ミナリが分っているので、誰でもカミナリと書き込む。しかしそれはウミナリかもしれないのである。カかウかは、この字のところに横の言葉がないので、絶對に分からない。もっとも鍵には、後から聞けば、なるほどウミナリであって、カミナリではないと分かる點もあるが、それが非常にむつかしい。

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