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TORENDIA

ジンギスカン鍋

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

蒙古の草原で食される羊肉料理、ジンギスカン鍋の魅力を綴る。特有の匂いを抑える大蒜を用いた調理法や、札幌での流行を紹介し、日本における普及の意義を考察する。北海道の農村で羊を増やすことは、羊毛の自給自足を通じた国家経済への貢献に繋がると主張する随筆。羊肉の消費拡大により、北海道の農業振興と外貨節約の双方を実現できるという著者の展望を描く。

中谷宇吉郎

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🎧 ジンギスカン鍋 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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蒙古の方へ行くと、緬羊の肉をさかんに食べる。茫々たる蒙古の草原の中で、暗夜星をいただいて、野外で緬羊の肉を、大きい鐵鍋の上でやきながら食べる。煙がもうもうと上るので、野外で食べるのに、ふさわしい料理である。

この料理は、ジンギスカン鍋と呼ばれるもので、東京などにも、二三食べさせる店がある。しかし日本でジンギスカン鍋を食おうと思ったら、札幌へ行くに限る。前からもあったのであるが、この近年急に流行して來て、札幌名物の一つになりつつある。

緬羊の肉は、蒙古と限らず、英國でもフランスでも、相當よく食われている。しかし少し匂いがあるので、日本人には不向きということになっている。もっともそれは料理法によるのであって、この匂いを消す方法はいくらもある。

ジンギスカン鍋は、そのうちでももっとも巧い方法であって、大蒜をすり込んだ味附醤油に肉を暫く浸しておいて、それから燒くのである。それで肉の匂いはすっかり消えて、そのかわり大蒜の匂いがつく。それをいやがる人もあるが、巴里の一流料理店で食わすフランス料理には、必ず大蒜が使われるそうであって、少量ならば、そう臭味を心配することはない。

この頃東京などからやって來る友人には、まずジンギスカン鍋を御馳走する。まあ珍しいせいもあるが、たいていは皆美味いと褒めてくれる。それで私もせいぜい宣傳の片棒をかついでいるわけである。それには、ジンギスカン鍋が美味いというだけでなく、今一つの理由があるからである。友人の一人に、敗戰後の日本再建について、いろいろ考えている男がいる。そして北海道の農地および農家の事情を調べた結果、北海道の農村には、百萬頭の緬羊を入れる餘地があるという結論に達した。

現在でも、北海道の農家の中には、一頭か二頭の緬羊を飼っている家が相當ある。年に一回毛をかると、一貫目くらいはとれるので、家族全體の靴下や手袋、家によっては、チョッキくらいは作れる。それで皆重寶しているのであるが、それ以上はなかなか殖えない。

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