TORENDIA
高山の雪
小島烏水
TORENDIA
高山の雪
本文約12,500字 ・ 読了時間 約26分
あらすじ(AIが作成しました)
日本の高山における雪の美と、その地質や生態系への影響を論じる。山岳と雪の密接な関係を紐解き、遠望される景観のみならず、積雪が形成する多様な雪田の形態やカアルの浸蝕作用、氷河の循環について解説する。また、雪がもたらす峻厳な美しさを山岳の装飾と捉え、過酷な環境下で高山植物などの生命を育む雪の役割を綴る。
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一
日本は海国で、島国であるには違いないが、国内には山岳が重畳して、その内部へ入ると、今でも海を見たことのないという人によく出会うのは、私が山岳地の旅行で親しく知ったことである。これに反して山を(高低の差別はあるにもせよ)未だ生れてから見たことがないという人は、盲目でない限りは、殆んどないようである。これは山岳そのものの性質が立体で、遠見が利くからでもあるが、日本が全体において山岳国であることが解る。極端に言えば、日本人は国内においては、向うに山の見えないという地平線に立ったことは、未だないはずである。冬は言うまでもないとして、三月四月頃、試みに郊外に出て見給え、遠くに碧い山か、斑らな雪の縞を入れて、菜の花の末、または青葉若葉の上に、浮ぶように横たわっている。もっとも山の高低や、緯度の如何に随って雪の多少はあるが、高山の麓になると、一年中絶えず雪を仰ぎ視る事が出来る。就中夏の雪は、高山の資格を標示する徽章である。
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