旗本退屈男
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あらすじ(AIが作成しました)
元禄七年、将軍綱吉による生類憐みの令が江戸を覆う中、恒例の御前試合が開催される。見物に訪れた旗本・早乙女主水之介は、試合中、謎の美女の出現と同時に飛来した鉄扇が発端となる騒動に巻き込まれる。背後に渦巻く怪しげな浪人集団の存在を察知した主水之介は、持ち前の武勇で対峙し、敵を追い詰めていく。権力と不穏な策謀が交錯する江戸を舞台に、額の三日月疵を誇る無敵の退屈男が真実を追って奔走する姿を描く。
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一
――その第三話です。
江戸年代記に依りますと、丁度この第三話が起きた月――即ち元禄七年の四月に至って、お犬公方と綽名をつけられている時の将軍綱吉の逆上は愈々その極点に達し、妖僧護持院隆光の言語道断な献言によって発令された、ご存じのあの軽蔑すべき生類憐みの令が、ついに嗤うべき結果を当然のごとく招致しまして、みつかり次第に拾って飼っておいた野良犬が、とうとう二万頭の多数に及び、到底最早江戸城内の犬小屋だけでは、おびただしいそれらのお犬様を取締ることが出来なくなりましたので、西郊中野と大久保に、それぞれ十万坪ずつの広大なお犬小屋をしつらえ、これに一万頭ずつをふり分けてお移し申しあげ、専任のお犬奉行なる者を新たに任命いたしまして、笑止千万なことにはこれらの犬の中で、最も多く子供を生産する奴には、筑前守おクロ様とか、或はまた尾張守おアカ様とか言うような名前をつけたと書かれてありますが、しかし、そういう逆上した一面があるにはあっても、さすがに江戸八百万石の主、天下兵馬の統領たる本来の面目を失わないのは豪気なものです。
と言うのは、年々歳々、日を追うて次第に士風の遊惰に傾くのを痛嘆いたしまして、士気振興武道奨励の意味から、毎年この四月の月の黄道吉日を選んで、何等か一つずつ御前試合を催す習慣であったのがそれですが、犬にのぼせ上がっていても、感心にその年中行事だけは忘れないとみえ、この年も亦二十四日の晴天を期して、恒例通り御前試合のお催しがある旨発表になりました。
――試合項目は槍に馬術。
――場所は小石川小日向台町の御用馬場。