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TORENDIA

帰去来

本文約15,400字 ・ 読了時間 約31分

あらすじ(AIが作成しました)

多くの人に支えられながらも、自身の力不足により恩に報いることのできない不甲斐なさを感じている著者が、自身の半生を振り返る。中畑と北という二人の恩人に焦点を当て、特に十年振りの帰郷を画策した北との旅の顛末を描く。実家との葛藤や故郷での母との再会を通じて、自身の抱える不誠実さや周囲への迷惑を省みる。本作は、個人の勝手な振る舞いが大切な人々の身を削っているという自責の念と、変わらぬ恩情への感謝を綴った回想録である。

太宰治

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人の世話にばかりなって来ました。これからもおそらくは、そんな事だろう。みんなに大事にされて、そうして、のほほん顔で、生きて来ました。これからも、やっぱり、のほほん顔で生きて行くのかも知れない。そうして、そのかずかずの大恩に報いる事は、おそらく死ぬまで、出来ないのではあるまいか、と思えば流石に少し、つらいのである。

実に多くの人の世話になった。本当に世話になった。

このたびは、北さんと中畑さんと二人だけの事を書いて置くつもりであるが、他の大恩人の事も、私がもすこし佳い仕事が出来るようになってから順々に書いてみたいと思っている。今はまだ、書きかたが下手だから、ややこしい関係の事など、どうしても、うまく書けないのではあるまいかというような気がするのであるが、その点、北さんと中畑さんの事ならば、いまの私の力でもってしても、わりあい正確に書けるのではなかろうかと思うのである。それは、どちらかと言えば、単純な、明白な関係だからである。けれども、実在の、つつましい生活人を描くに当って、それ相応のこまかい心遣いの必要な事も無論である。あの人たちには、私の描写に対して訂正を申込み給う機会さえ無いのだから。

私は絶対に嘘を書いてはいけない。

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