丹下左膳
本文約192,900字 ・ 読了時間 約386分
あらすじ(AIが作成しました)
焼け跡で火事の模様を探る丹下左膳は、司馬道場の門人たちが柳生源三郎を罠に嵌め、同じ場所に居合わせた自分もろとも消し去ろうとする陰謀に直面する。この地での騒動を皮切りに、道場乗っ取りを画策する峰丹波らとの抗争、そして柳生家に伝わる「こけ猿の茶壺」を巡る争奪戦が激化する。日光の地で一行が合流し、それぞれの因縁や謎が交錯する中、左膳は剣を振るいながらも、やがて消息を絶ち、人々の運命と財宝の行方は歴史の彼方へと消えていく。
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土葬水葬
一
ふしぎなことがある。
左膳がこの焼け跡へかけつけたとき、いろいろと彼が、火事の模様などをきいた町人風の男があった。
そのほか。
近所の者らしい百姓風や商人体が、焼け跡をとりまいて、ワイワイと言っていたが。
この客人大権現の森を出はずれ、銀のうろこを浮かべたような、さむざむしい三方子川をすこし上流にさかのぼったところ、小高い丘のかげに、一軒の物置小屋がある。
近くの農家が、収穫どきに共同に穀物でも入れておくところらしいが……。
空いっぱいに茜の色が流れて、小寒い烏の声が二つ三つ、ななめに夕やけをつっきって啼きわたるころ。
夕方を待っていたかのように、その藁屋根の小屋に、ポツンと灯がともって、広くもない土間に農具の立てかけてあるのを片づけ、人影がザワザワしている。
「イヤ、これで仕事は成就したも同様じゃ。強いだけで知恵のたらぬ伊賀の暴れン坊、今ごろは、三方子川の水の冷たさをつくづく思い知ったであろうよ、ワッハッハ」
と、その同勢の真ん中、むしろの上にあぐらをかいて、牛のような巨体をゆるがせているのは、思いきや、あの司馬道場の師範代、峰丹波。
「ほんとうにむごたらしいけれど、敵味方とわかれてみれば、これもしかたがないねえ」
大きな丹波の肩にかくれて、見えなかったが、こう言って溜息をついたのは、お蓮様である。
取りまく不知火連中の中から、誰かが、
「ムフフ、御後室様はいまだにあの源三郎のことを……」
お蓮様は、さびしそうな笑顔を、その声の来たうす暗いほうへ向けて、
「何を言うんです。剣で殺されるのなら、伊賀の暴れン坊も本望だろうけれど、お前達の中に誰一人、あの源様に歯のたつ者はないものだから、しょうことなしに、おとし穴の水責め……さぞ源さまはおくやしかろうと、わたしはそれを言っているだけさ」
「そうです」
と丹波は、ニヤニヤ笑いながら一同へ、
「お蓮様は武士道の本義から、伊賀の源三に御同情なさっているだけのことだ。よけいな口をたたくものではない」
と、わざとらしいたしなめ顔。