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TORENDIA

中国怪奇小説集

本文約10,400字 ・ 読了時間 約21分

あらすじ(AIが作成しました)

清朝の詩人王士禎が綴った随筆『池北偶談』を軸に、怪奇な現象や異界の事象を語る。狐に魅入られた屋敷での霊的な名画の攻防、首のない者たちの宴、前世の恨みを晴らす死者の訪れ、不思議な火の神の出現、そして人の姿をした化鳥との対峙まで、現実と非現実の境が揺らぐ多様な怪異譚を収める。古今の逸話を通じて、人智を超えた不可思議な理が支配する中国の伝承世界を鮮やかに描き出す。

岡本綺堂

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第十三の男は語る。

「清朝もその国初の康煕、雍正、乾隆の百三十余年間はめざましい文運隆昌の時代で、嘉慶に至って漸く衰えはじめました。小説筆記のたぐいも、この隆昌時代に出たものは皆よろしいようでございます。わたくしはこれから王士禎の『池北偶談』について少しくお話をいたそうと存じます。王士禎といってはお判りにならないかも知れませんが、王漁洋といえば御存じの筈、清朝第一の詩人と推される人物で、無論に学者でございます。

この『池北偶談』はいわゆる小説でもなく、志怪の書でもありません。全部二十六巻を談故、談献、談芸、談異の四項に分けてありまして、談異はその七巻を占めて居ります。右の七巻のうちから今夜の話題に適したようなものを選びまして、大詩人の怪談をお聴きに入れる次第でございます」

名画の鷹

武昌の張氏の嫁が狐に魅まれた。

狐は毎夜その女のところへ忍んで来るので、張の家では大いに患いて、なんとかして追い攘おうと試みたが、遂に成功しなかった。

そのうちに、張の家で客をまねくことがあって、座敷には秘蔵の掛物をかけた。それは宋の徽宗皇帝の御筆という鷹の一軸である。酒宴が果てて客がみな帰り去った後、夜が更けてからかの狐が忍んで来た。

「今夜は危なかった。もう少しでひどい目に逢うところであった」と、狐はささやいた。

「どうしたのです」と、女は訊いた。

「おまえの家の堂上に神鷹がかけてある。あの鷹がおれの姿をみると急に羽ばたきをして、今にも飛びかかって来そうな勢いであったが、幸いに鷹の頸には鉄の綱が付いているので、飛ぶことが出来なかったのだ」

女は夜があけてからその話をすると、家内の者どもも不思議に思った。

「世には名画の奇特ということがないとは言えない。それでは、試しにその鷹の頸に付いている綱を焼き切ってみようではないか」

評議一決して、その通りに綱を切って置くと、その夜は狐が姿をみせなかった。翌る朝になって、その死骸が座敷の前に発見された。かれは霊ある鷹の爪に撃ち殺されたのであった。

その後、張の家は火災に逢って全焼したが、その燃え盛る火焔のなかから、一羽の鷹の飛び去るのを見た者があるという。

無頭鬼

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