微笑
本文約760字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
丸裸の可愛らしいお河童さんの人形は、時間と空間を超越したような微笑を浮かべている。その真実無上の美しさに羨望と憎悪を抱いた語り手は、人形を破壊し解体する。しかし、バラバラになっても笑い続ける人形の姿に、語り手は苛立ちを募らせる。庭の掃き溜めに捨てられた人形の断片は雨に晒され、その中から顔を覗かせた硝子の片眼がなおも空を見つめて微笑む様子を描く。
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それは可愛らしい、お河童さんの人形であった。丸裸体のまま……どこをみつめているかわからないまま……ニッコリと笑っていた。
……時間と空間とを無視した……すべての空虚を代表した微笑であった。
……真実無上の美くしさ……私は、その美くしさが羨ましくなった。云い知れず憎々しくなった。そのスベスベした肌の光りが無性に悲しく、腹立たしく、自烈度くなった。
その人形を壊してしまいたくなった。その微笑をメチャメチャにしたくなった。私は人形を抱き上げて、静かに首をねじって見た。するとその首は、殆んど音も立てないで、ポックリと折れた中から、竹の咽喉笛がヒョイと出て来た……人を馬鹿にしたように……。
私は面白くなった。
拳固を固めてポカリと頭をたたき割ったら、鋸屑の脳味噌がバラバラと崩れ落ちて来た。胴を掴み破ると、ボール紙の肋骨が飛び出した。その下から又、薄板の隔膜と反故紙の腸があらわれた。手足をポキポキとヘシ折ったら、中味は灰色の土の肉ばかりで、骨の処は空虚になっていることがわかった。
けれども人形は死ななかった。何もかもバラバラになったまま、可愛らしくニコニコしていた。
私はいよいよ苛立たしくなった。人形の破片を残らず古新聞に包んで、グルグルと押し丸めて、庭の隅のハキダメにタタキ込んだ。……こんな下らないものを作った人形師を咀いながら…………。
その古新聞紙はハキダメの中で雨にたたかれて破れた。メチャメチャになった人形の手足が、ゴミクタの中に散らばった。その中から可愛らしい硝子の片眼だけが、高い高い青空を見詰めながら、いつまでもいつまでも微笑していた。私はずっと後になってそれを発見した。そうして何かしらドキンとさせられた。
私は履物の踵で、その片眼を踏みつけた。全身の重みをかけてキリキリと廻転した。
白い太陽がキラキラと笑った。
完