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TORENDIA

小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」

本文約2,600字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

小泉八雲が遺した「ゴブリン・ポエトリー」の草稿を、没後三十年を記念して複製・刊行した限定版について解説する。本書は児童用のノートに書かれた肉筆の詩稿と、そこに描き添えられた「古椿」や「雪女」などの化け物の素描をそのまま写真複製したものである。英訳詩と邦文解説を並行させ、愛用した蒲団地の表紙を纏った本書の造本における異彩と、詩人の西欧的な空想や日本文化への深い認識がうかがえる草稿の魅力を論じる。

寺田寅彦

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🎧 小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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十余年前に小泉八雲の小品集「心」を読んだことがある。その中で今日までいちばん深い印象の残っているのはこの書の付録として巻末に加えられた「三つの民謡」のうちの「小栗判官のバラード」であった。日本人の中の特殊な一群の民族によっていつからとも知れず謡い伝えられたこの物語には、それ自身にすでにどことなくエキゾティックな雰囲気がつきまとっているのであるが、それがこの一風変わった西欧詩人の筆に写し出されたのを読んでみると実に不思議な夢の国の幻像を呼び出す呪文ででもあるように思われて来る。物語の背景は現にわれわれの住むこの日本のようであるが、またどこかしら日本を遠く離れた、しかし日本とは切っても切れない深い因縁でつながれた未知の国土であるような気もする。そうかと思うとどこかまたイギリスのノーザンバーランドへんの偏僻な片田舎の森や沼の間に生まれた夢物語であるような気もするのである。

それからずっと後に同じ著者の「怪談」を読んだときもこれと全く同じような印象を受けたのであった。

今度小山書店から出版された「妖魔詩話」の紹介を頼まれて、さて何か書こうとするときに、第一に思い出すのはこの前述の不思議な印象である。従って眼前の「妖魔詩話」が私に呼びかける呼び声もまたやはりこの漠然とした不思議な印象の霧の中から響いてくるのは自然の宿命である。

八雲氏の夫人が古本屋から掘り出して来たという「狂歌百物語」の中から気に入った四十八首を英訳したのが「ゴブリン・ポエトリー」という題で既刊の著書中に採録されている。それの草稿が遺族の手もとにそのままに保存されていたのを同氏没後満三十年の今日記念のためにという心持ちでそっくりそれを複製して、これに原文のテキストと並行した小泉一雄氏の邦文解説を加えさらに装幀の意匠を凝らしてきわめて異彩ある限定版として刊行したものだそうである。

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