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TORENDIA

丸善と三越

本文約15,100字 ・ 読了時間 約31分

あらすじ(AIが作成しました)

丸善と三越を巡る日曜日の散歩を通じ、書店と百貨店が持つ独特の空気や体験を綴る。書棚に並ぶ洋書に少年時代の憧憬を重ねる筆者は、店内の書物から得られる刺激と、そこに漂う知的な雰囲気に触れる。続いて訪れる百貨店では、陳列された商品や屋上の温室を眺めつつ、都市の喧騒の中で抱く複雑な心理や、人工的な空間と自然との対比についての考察を記す。帰路の道中で感じる日常への回帰までを描き出し、都会で過ごすひとときを記録する随筆である。

寺田寅彦

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子供の時分から「丸善」という名前は一種特別な余韻をもって自分の耳に響いたものである。田舎の小都会の小さな書店には気のきいた洋書などはもとよりなかった、何か少し特別な書物でもほしいと言うと番頭はさっそく丸善へ注文してやりますと言った。中学時代の自分の頭には実際丸善というものに対する一種の憧憬のようなものが潜んでいたのである。注文してから書物が到着するまでの数日間は何事よりも重大な期待となんとも知らぬ一種の不安の戦いであった。そしてそれが到着した時に感じたあの鋭い歓喜の情はもはや二度と味わう事のできない少年時代の思い出である。

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