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TORENDIA

天災と国防

本文約7,400字 ・ 読了時間 約15分

あらすじ(AIが作成しました)

函館の大火や近畿地方の風水害などの天変地異が相次ぐ中、著者は文明の進歩とともに災害の被害が甚大化する傾向を指摘する。近代化によって日本は高度な有機的結合を持つ国家となり、一部の機能不全が全体に致命的な影響を及ぼすようになった。天災に対する科学的な備えを怠る現状を憂い、物理的な国防と並ぶ科学的な国防策の重要性を説くとともに、平時からの合理的な備えを国民と為政者に促す文明論的考察を綴る。

寺田寅彦

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「非常時」というなんとなく不気味なしかしはっきりした意味のわかりにくい言葉がはやりだしたのはいつごろからであったか思い出せないが、ただ近来何かしら日本全国土の安寧を脅かす黒雲のようなものが遠い水平線の向こう側からこっそりのぞいているらしいという、言わば取り止めのない悪夢のような不安の陰影が国民全体の意識の底層に揺曳していることは事実である。そうして、その不安の渦巻の回転する中心点はと言えばやはり近き将来に期待される国際的折衝の難関であることはもちろんである。

そういう不安をさらにあおり立てでもするように、ことしになってからいろいろの天変地異が踵を次いでわが国土を襲い、そうしておびただしい人命と財産を奪ったように見える。あの恐ろしい函館の大火や近くは北陸地方の水害の記憶がまだなまなましいうちに、さらに九月二十一日の近畿地方大風水害が突発して、その損害は容易に評価のできないほど甚大なものであるように見える。国際的のいわゆる「非常時」は、少なくも現在においては、無形な実証のないものであるが、これらの天変地異の「非常時」は最も具象的な眼前の事実としてその惨状を暴露しているのである。

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