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TORENDIA

日本人の自然観

本文約22,000字 ・ 読了時間 約45分

あらすじ(AIが作成しました)

日本の自然環境が日本人の精神や生活様式に及ぼした影響を論じる。気候や地理的特異性が、古来より日本人に自然への深い親しみと畏怖の念を抱かせ、独自の生活の知恵や適応のあり方を育んだ背景を考察する。また、西洋由来の科学や文化を無批判に受け入れる現代の姿勢を問い直し、日本の風土の特質を深く自覚した上で新たな環境へ順応することの重要性を説く。

寺田寅彦

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緒言

「日本人の自然観」という私に与えられた課題の意味は一見はなはだ平明なようで、よく考えてみると実は存外あいまいなもののように思われる。筆を取る前にあらかじめ一応の検討と分析とを必要とするもののようである。

これは、日本人がその環境「日本の自然」をいかに見ていかに反応するか、ということ、またそれが日本人以外の外国人がそれぞれの外国の自然に対する見方とそれに対する反応しかたと比べていかなる特色をもつかということを主として意味するように思われる。そうして第二次的には外国人が日本の自然に対する見方が日本人とどうちがうかということも問題になりうるわけである。

もしも自然というものが地球上どこでも同じ相貌を呈しているものとしたら、日本の自然も外国の自然も同じであるはずであって、従って上記のごとき問題の内容吟味は不必要であるが、しかし実際には自然の相貌が至るところむしろ驚くべき多様多彩の変化を示していて、ひと口に自然と言ってしまうにはあまりに複雑な変化を見せているのである。こういう意味からすると、同じように、「日本の自然」という言葉ですらも実はあまりに漠然とし過ぎた言葉である。北海道や朝鮮台湾は除外するとしても、たとえば南海道九州の自然と東北地方の自然とを一つに見て論ずることは、問題の種類によっては決して妥当であろうとは思われない。

こう考えて来ると、今度はまた「日本人」という言葉の内容がかなり空疎な散漫なものに思われて来る。九州人と東北人と比べると各個人の個性を超越するとしてもその上にそれぞれの地方的特性の支配が歴然と認められる。それで九州人の自然観や東北人の自然観といったようなものもそれぞれ立派に存立しうるわけである。しかし、ここでは、それらの地方的特性を総括しまた要約した「一般的日本人」の「要約した日本」の自然観を考察せよというのが私に与えられた問題であろうと思われる。そうだとすると問題は決してそう容易でないことがわかるのである。

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