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TORENDIA

十二支考

本文約68,600字 ・ 読了時間 約138分

あらすじ(AIが作成しました)

猿の名称や伝承について古今の文献を博引傍証して論じる。諸国語の猴の呼称を辿り、ソロモン王や古代アッシリアにおける進貢の歴史からその起源を考察する。また、中国や日本において猴が呼子鳥や巫女と結びつけられた背景や、猿を象や馬の厩舎で飼う習俗の由来を探る。古来より人が猴を人間に近い存在や霊的な力を持つものと見なし、宗教的儀礼や民俗学的な観点から多様な解釈を加えてきた様子を綴る。

南方熊楠

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(一)概言

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一条摂政兼良公の顔は猿によく似ていた。十三歳で元服する時虚空に怪しき声して「猿のかしらに烏帽子きせけり」と聞えると、公たちまち縁の方へ走り出で「元服は未の時の傾きて」と附けたそうだ。予が本誌へ書き掛けた羊の話も例の生活問題など騒々しさに打ち紛れて当世流行の怠業中、未の歳も傾いて申の年が迫るにつき、猴の話を書けと博文館からも読者からも勧めらるるまま今度は怠業の起らぬよう手短く読切として差し上ぐる。

猴の称えを諸国語でざっと調べると、ヘブリウでコフ、エチオピア語でケフ、ペルシア語でケイビまたクッビ、ギリシア名ケポスまたケフォス、ラテン名ケブス、梵名カピ、誰も知る通り『旧約全書』が出来たパレスチナには猴を産せず。しかしソロモン王が外国から致した商品中に猴ありて、三年に一度タルシシュの船が金銀、象牙、猴、孔雀を齎らすと見ゆ。その象牙以下の名がヘブリウ本来の語でなく象牙はヘブリウでシェン・ハッビム、このハッビム(象)は象の梵名イブハに基づき、孔雀のヘブリウ名トッケイイムは南インドで孔雀をトゲイと呼ぶに出で、猴のヘブリウ名コフは猴の梵名カピをヘブリウ化したので、孔雀は当時インドにのみ産したから推すと、ソロモンが招致した猴も象もアフリカのでなくインドのものと判る。

第1図 アッシリアの口碑彫りたる象と猴

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