働く婦人の新しい年
本文約8,700字 ・ 読了時間 約18分
あらすじ(AIが作成しました)
日本の女性たちが社会的な歴史の変化に直面する中で迎える新しい年について綴る。家事や育児を主目的としてきた従来の教育制度から、勤労動員により多くの若い女性が社会の生産場面へと進む状況を論じる。一時的な就職や低賃金といった不利な現実を自覚しつつも、働く女性が責任と誇りを持って自身の明日を切り拓き、互いに協力して困難な時代を生き抜くことの意義と希望を説く。
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来年という声は、今日の日本のみんなに独特の感じを与えながら迫ってきた。きょうの生活の推しすすめとして今年の暮を考える心、さて来年は、と思う心、それは私たち日本の女にとって、これまでしばしば経験されて来たと同じ種類の年末、年頭の感想ではないように思われる。
日本の歴史をこめて世界の歴史は本年の間に未曾有の展開を示した。きわめて複雑な利害と力のからみ合いのままでこの年は暮れるであろう。世界史の頁がめくられようとして、その頁が丁度本の綴めの真上のところに来ているような刹那が、今年の暮れの感じである。来年という新しい頁の上に、どんな生活がくりひろげられてゆくか、そのことはまだはっきりと見えていない。しかし、何かおぼろげにその図取りがあることはわかっている。そのことは、私たちのある心に期待や想像やを目ざまさせる。
あらましにお互のその心持をいいあらわせば、私たちは、ともかく今年力いっぱいに生きて来たとおり、来年も一生懸命に生活してゆきましょう、そういう挨拶を交しあわすと思う。たとえば近頃往来に出ている立看板の「簡素の中の美しさ」という言葉を、本当に生活のなかから湧きいでた女性の健やかな美感への成長として実感してゆくのも来年の事だし、こんなに炭の不足している一冬を、互に協力して体も丈夫に仕事も停滞させず過しぬいたという経験が、社会的な辛苦に対して女性をはっきり目ざませてゆくのも、いってみれば来年に予想される収穫の一つであろう。
私たちが来年に対しておのずからもつ心持は、こうしてみるとずいぶん引き緊ったものだと思われる。何かましなことがありはしまいかしら、と落付きなく目を外へ向けてきょろつくよりも、ひとりでに背中を真直にし、膝頭に力を入れて歩道をも踏みつつ、来年はどんなことになってもおどろかず、ちゃんと暮して行こうとさらに自分への心をかためる、そんな気分におかれていると思う。