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TORENDIA

村からの娘

本文約4,500字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

信州の山奥から上京した少女・とし子が、民子の家庭で女中として暮らす様子を描く。世間知らずで一本気な少女が、都会の生活様式に当惑する姿を通じ、著者は地方出身の娘たちが直面する過酷な現実を考察する。また、当時の東北地方の飢饉をめぐり、道徳的側面からのみ身売りを論じる世間の風潮を批判し、窮乏の根底にある経済的原因と、大衆自身の自発的な連帯による打開の重要性を鋭く論じる。

宮本百合子

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🎧 村からの娘 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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新年号の『文学評論』という雑誌に、平林英子さんの「一つの典型」という小説がのっていて時節柄私にいろいろの感想をいだかせた。

民子というプロレタリア文学の仕事をしている主婦のところへ、或る日突然信州の山奥の革命的伝統をもった村の大井とし子という娘から手紙が来る。その手紙は「あなたがこちらへお出下さいましてよりもはや一年が過ぎました。農村は不景気の風に吹きまくられて、百姓はその日のパンにさえありつくことが出来ません。これから段々寒くなってゆくばかりでございます」というような書き出しで「ついては大変突然で申しかねますが私をあなたのお家の女中にでも使って下さるわけには参りませんでしょうか」というのであった。民子が自分の家庭の事情をも考え、はっきりした返事を出しかねているうちに、電報で明朝新宿へ着くから迎えに出てくれということになり、愈々上京したとし子が民子の家庭で、一とおりならぬ民子の気づかいを引起しつつ暮す次第が、すらすらと巧に描かれているのである。

山奥の世間知らずで、物心づくとから左翼的な考えかたでだけ育てられた十六の娘の一本気で、非実際的な気持や姿がガスのひねり工合一つにさえ神経を用いなければならぬ都会の家庭生活の細々した有様の描写を背景としてまざまざ書かれている。良人仙吉とは文学の階級性についても違った考えをもっていて、過去においては信州のその村へも講演に行ったりした民子が、そういうとし子の出現につれて、彼女の当惑をどちらといえば揶揄する周囲の良人・良人の友達などに対する気がね、気づかいの感情もどこやらユーモアをふくんで、私は女らしい筆致でよく描き出されていると思った。

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